法律の情報館

 

最終更新日 2017/09/13 DscyOffice Top
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■ 歯科医療を取り巻く法律の一例

# 政令とは内閣が定めた命令で閣議の決定によって成立し、主務大臣が署名し、総理大臣が連署し、天皇が公布する。

根拠法: 日本国憲法
第73条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
6.この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。
但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。

# 省令とは、各省の大臣が主任の行政事務について、または、法律もしくは政令の委任に基づいて発する命令。

根拠法: 国家行政組織法
(行政機関の長の権限)
第12条 各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれ
その機関の命令として省令を発することができる。
2 各外局の長は、その機関の所掌事務について、それぞれ主任の各省大臣に対し、案をそなえて、省令を発することを求めることができる。
3 省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、
若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。

# 通知(通達)
 通達とは書面によって送付された訓令のこと。訓令とは上級行政機関がその指揮命令権に基づいて下級行政機関に発する命令を言う。
 通達は、法令に違反しないかぎりにおいてしか効力を有しないので、法律の規定を重視し、ついで法律が空白である範囲において通達に従う
べきである。

# 行政指導
行政機関が、行政目的を実現するために私人又は他の行政機関に対して法的拘束力の無い手法によって働きかけることをいう。そういった意味
では保険医の指導が行政指導として認識していいのか疑問である。
 しかし、ここにも記載したように、指導要綱は行政内部の規範(行政規則)にすぎないのであるから、指導要綱を根拠とすることだけをもって
行政指導が適法と評価されるわけでは無い(最判平成5.2.18民集47巻2号574頁)ということから、保険医の指導大綱がどのような意味を持つ
のかは不明である。

# 条文の読み方
「1」: 項と読む
「一」: 号と読む

参考:「新行政法辞典」ぎょうせい刊 平成11年3月25日版

法律の基本的な考え方

# 法の概念

法の中心になるものは憲法の理念のもとに国会で制定された「法律」であり、法律の細則を定めた政令(施行令)・省令(施行規則)や地方に
て制定された条例等も含まれる。その他に裁判所の判決・慣習なども法としての効力を持つことがある。
例) 日本国憲法 → 歯科医師法(他の法令) → 歯科医師法施行
令 → 歯科医師法施行規則 → 厚生労働省通知

# 診療契約とは何か?

診療契約は一般的に「準委任契約(民法656条)」とされ、委任者(患者)が受任者(歯科医師)を信頼して労務(診療行為)を依頼することを原則としており、これは通説、判例により裏付けされています。
又義歯の製作・正常分娩などを請負契約とみなす説もある。しかし、これらの医療を請負契約とする考え方には反対意見も多い。

# 歯科医療行為の合法性

他人の体に傷を付けたり(歯を抜く)、劇薬を飲ませたり(風邪薬を処方する)行為は刑法204条などにより暴行罪や傷害罪に問われる。し
かし歯科医療という正当な業務の範囲で有れば犯罪にはならない。これは刑法35条「正当な業務による行為は罰しない。」による。
ではどの様な行為が正当な診療業務と認められるのか?それは
@ 治療を目的とすること。
A 歯科医学上一般的に認められた方法であること。
B 本人・保護者などの同意があること。

# 診療契約上の歯科医師の義務

@ 善良なる管理者としての注意義務
専門家としての歯科医師に求められる歯科医療水準に達した医療行為が要求される。

A 説明義務
患者は自分の身体の状況に対して知る権利があり、歯科医師はこれに対して説明義務がある。ここで言う説明とは民法上の契約関係(民法64
5条の報告義務)から生じてくる最低限のものであり、インフォームドコンセントとしての説明とは異なる。

B 転医の勧告
自らの医療水準で治療が不可能な患者に対して、適切な医療機関へ転医させる事を言う。

# 歯科医師が診療に際して守るべき義務

@ 診療応召義務(歯科医師法第19条) 
応召義務の拒否は、正当な理由の有ったときのみ許される。
(応召義務に関しての厚生省通達 昭和24年)
(1) 診療報酬の不払いがあっても、ただちにこれを理由として診療拒否はできない。
(2) 診療時間を制限している場合でも、この理由により急患の診療拒否はできない。
(3) 特定の人を相手に診療する医師(会社の医務室勤務等)でも、緊急の診療の求めがあって、近隣に他に診療に従事する医師が居ないとき
は診療拒否はできない。
(4) 天候の不良なども、事実上往診不可能な場合を除いて診療拒否はできない。
(5) 医師が自己の標榜する診療科以外の疾病について診療を求められた場合にも、患者がこれを了承する場合には正当な理由になるが、了承
しないで診療を求める場合には、応急処置その他できるだけの範囲のことはしなければならない。

A 無診察治療の禁止(歯科医師法第20条)
一般的に無診察治療とは、たとえば「歯が痛いと訴えて来院した患者が忙しくて待っていられないから薬だけでもほしいという申し出に対して、
無診察で鎮痛剤を処方する。」等を言う。
以下の行為は無診察治療とは言わない。
(1) 通信回線を利用して医療情報を送ることによる診断。
(2) 患者を継続的に診療している場合で、患者の病状に著しい変化が無い場合で、電話によって病状の変化を尋ね、指示を行うこと。

B 保健指導義務(歯科医師法第22条)
患者に対する保健指導も歯科医療の一部である。

C 診療録の記載と保存義務(歯科医師法第23条)
診療録は患者と医師との診療契約に基づく診療過程を記載するもので大事な職務である。
医療過誤が生じた場合に、診療録は解明のための重要な文書となる。司法上の証拠としては、日本では一般文書には証拠能力は無いとされてい
る。しかし診療録は業務の通常の過程において作成された書面に含まれ、例外的に証拠能力のある書類と見なされている。(刑法第323条)
民事上は文書は証拠能力を有するので、診療録は重要な証拠とされる。

D 患者の秘密を守る義務(刑法第134条)
業務上知り得た他人の秘密をみだりに漏らしてはならない。

# 患者の人権
患者の権利をうたった宣言として有名なものに、「リスボン宣言」があ
る、これは1981年の世界医師会総会で出されたものである。

リスボン宣言

 実際的、倫理的、または法律的に困難であるかもしれないと言うことを認識した上で、医師は常に自己の良心に従い、また常に患者の最善の
利益のために行動するべきである。下記の宣言は、医師が与えようと努める、主な患者の権利の一部を述べている。

@ 患者は自分の医師を自由に選ぶ権利を有する。
A 患者はなんら外部からの干渉を受けずに、自由に臨床的および倫理的判断を下す医師の治療看護を受ける権利を有する。
B 患者は十分な説明を受けた後に、治療を受け入れるか又は拒否する権利を有する。
C 患者は自分の医師が、患者に関係するあらゆる医学的および個人的な詳細なことがらの機密的な性質を尊重することを期待する権利を有す
る。
D 患者は尊厳を以て死を迎える権利を有する。
E 患者は適当な宗教の聖職者の助けを含む精神的および道徳的慰めを受けるか、またはそれを断る権利を有する。

# 歯科口腔保健の推進に関する法律

■ 歯科医師の説明義務の一例
東京地裁判決 平成13年12月20日: メタルボンドを使用した奥歯の補綴処置及び12本の歯牙に対する抜髄処置について、歯科医師に患者に対する説明義務違反はないとされた事例
 「医療行為は高度の専門性を有しており、医師が、治療の都度、患者に対し、治療の専門的な名称や内容、他にとりうる方法などを全て説明し、患者の選択を受けなければならないとすれば、専門技術としての適正な医療行為は到底行うことができないと解される。従って、医師の患者に対する説明の程度及び方法については、具体的な病状、治療方法の合理性や危険性、患者の知識、性格等を考慮した医師の合理的裁量に委ねざるを得ない部分が多いものと認められる。

■ 夫婦間の共有財産
 民法 第762条〔特有財産、帰属不明財産の共有推定〕
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする。
(2)夫婦のいずれに属するか明かでない財産は、その共有に属するものと推定する。

 夫婦共稼ぎの場合、「夫の収入は夫の財産であり、妻の収入は妻の財産」となる。しかし、第760条〔婚姻費用の分担〕にも記載してあるように(夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する)、いわゆる家事費はお互いの収入に応じて分担して支出することとなる。しかし、実際にはある程度それらの支出は混在して明確に区分できないことも多く、結果として後にそれらの明細を立証できないことが多い。それは当然のことであり、それが家庭生活である。帳簿記載義務のある事業会計とことなるのは当然である。しかし、ある場合にはそれが裏目と出る場合があるので注意が必要である。
 その代表的な一例が「専従者給与で生活する」という例です。事業所得の余剰金は後の設備投資の資金源としたり、借入金の返済にあてたり、運転資金としたりで余裕が無い場合がある。そういった場合には「専従者給与で生活する」ことになるのである。しかし、この場合専従者(一般には妻)の給与は家事費としての消費に当てられるため資産として残ることはなく、結果として事業主(一般には夫)の方に事業資産として蓄積される事になる。この結果どういう事が想定されるか考えてみたい。
@ 離婚の場合: 婚姻後に形成された財産は、離婚のときに財産分与の請求という問題が生じるが、その金額は「財産形成上の寄与」が考慮され、理論的には「専従者給与で生計を支えた」という寄与によって事業主の財産形成が行われたと考えられることから、夫の財産の相当額は妻に分与される。そしてこの場合純粋に民事上の問題で、お互いの話し合いでどうとでも解決できることです。
A 相続の場合: たとえば夫が死亡した場合、夫名義の財産が多ければ相続財産が多くなり、結果として相続税に跳ね返ります。従って、専従者給与を家事費として消費して夫の財産だけが増えていくようになると困ってしまうので、そういった状態にならないように注意しなければなりません。それにはいくつかの方法がありますが、ここでは割愛します。
 また、普段の支出を専従者給与から行い、資金繰りのゆとりのある時に何ヶ月かぶんの金額を妻に夫が一括して支払う場合には贈与と認定されないように注意が必要です。特に、その資金移動が夫の口座から妻の口座へ振替のような状態で行われてる場合、将来の相続税の反面調査の際には単なる資金移動(若しくは贈与)とみなされる場合がある。何度もいうが、一般の家事消費とそれに伴う資金移動は事業会計とは異なり立証のための証拠(帳簿)が残っていないケースがほとんどである。
 家庭生活を営んでいると、その財産がどちらのものか判別できないことも良くあることである。例えば、夫が拠出した生活費の一部を妻がへそくりとして蓄えた場合などである。この場合は、前述の民法 第762条の(2)において共有財産と判断される事になるのだが、そのへそくり?が妻の収入から得たことが事実だとしたらどうであろう?これまた夫が死亡した相続時において、「帰属が判別しない財産」となれば当然のことながら、相続財産として相続税の対象となり、「妻の財産」とすればそれにあたらない。これは大きな問題になりかねない。

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