医行為(医業)

 

最終更新日 2015/09/05

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 歯科医療を行うに際して、職務範囲という概念を心得ておく必要があることは言うまでもない。広くは「医師と歯科医師の職務範囲」、狭くは「歯科医師と歯科衛生士の職務範囲」などが該当する。我々一般開業医にとって普段の診療において大事なのは後者であり「歯科医師と歯科衛生士の職務範囲」というものを心得て置く必要があると言うことである。その疑問を解くために医行為(医業)とはなにかということを理解しなければならない。なぜならば医行為(医業)は医師(歯科医師)の専権業務だからである。

さて、医業・歯科医業がそれぞれの有資格者の専権業務であることは、「医師法第17条」「歯科医師法第17条」に定められていることは御存知のことと思うが、では医業(歯科医業)とは何かと尋ねられると「はてと首を傾げる」ことも多いかと思われる。同法においては「医行為を業として規制することは記載されているが、具体的な行為については明示されていない。そこで、まず医行為(医業)とは何かについて考えてみたい。

なお以後の記載においては、法的概念に基づき「医行為」と「歯科医行為」を区別せず記載しているが、行為そのものにおいては区別されるべき内容であることをお断りしておく。


● 医行為と医業

医業とは「反覆継続の意思をもって医行為に従事すること」とされている。
一般社会通念によると、医行為とは「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」とされている。これは判例としても「最高裁判所昭和30年5月24日」であきらかにされており。また2005年の医政局長通知でもあきらかだ。
しかし単純に医行為といっても区分すれば以下の二つに区分される。

(1) 絶対的医行為
絶対的医行為であり、これは医師法第17条の「医師でなければ、医業をなしてはならない」に固執した考え方といえる。
(2) 相対的医行為
相対的医行為であり、医師の指示により第三者によっても行え得る行為であるとの考え方である。
この場合の第三者とは大きく分けて「医療関係者」と「非医療関係者」に区分される。
医療関係者における相対的医療行為の代表的なものに、「医師の指示により看護婦が行う注射」があり、非医療関係者における相対的医療行為の代表的なものに、「学校医の指示により教諭が行う医療ケア」がある。

 一般的に医師や歯科医師が、看護婦や衛生士に指示して行わせる行為はこの様な「相対的医行為」であり、その業務は「看護婦助産婦保健婦法」や「歯科衛生士法」で定められた「診療補助」の範囲とされる。この相対的医行為をどの程度の範囲で認めるかと言うことであるが
、その認定は流動的であり指示された看護婦や歯科衛生士の臨床経験により差があると考えられている。それは「歯科衛生士への指示の目
安(診療補助の行為の指示の適否)歯科衛生士養成所教授要綱」などにおいても明瞭である。

 なお医行為として禁じられるのは他人に対してであり、その場合依頼や同意があっても違法となる。しかし自ら、たとえば血圧を自己測定
したり、自分の耳にピアスを空けることは禁じられていない。また医行為はあくまで人体に直接触れる行為に限定される。

ちなみに、視力測定・肺活量測定・身長体重計測・抜毛・検尿・検便・心理カウンセリング等は非医行為とされている。
  
● 医行為に関する判例

(医行為とされた判例)

(1) 接骨行為(大判大3・1・22)
(2) 需要者が病状を具しまたは病体を薬剤師の診断に供して治療の薬剤を求め、薬剤師がその判断にしたがい療法としての特定の薬剤を調
合して交付する行為(大判大6・3・19)
(3) 三稜鍼を用いて瀉血を行うこと(大判大11・3・17)
(4) トラホーム患者に対しピンセットを使用して患者の顆粒を取り去る行為(大判大11・11・17)
(5) 眼瞼より逆睫毛を抜き取る行為(大判大12・8・17)
(6) 柔道整復術者が探膿針を使用して化膿の有無を検査する行為(大判大12・12・22)
(7) マッサージ術免許者がいわゆる治病的マッサージ(たとえば膣内に二指を挿入して施す子宮整復のための摩擦等)を行うこと(大判昭2・7・6)
(8) 問診のみによる診察をしたうえ服用すべき薬草を指示しまたは患部を撫でもしくは揉む行為(大判昭6・7・9)
(9) 鍼術営業者が聴診器、験温器を使用して診察し適応薬(売薬なると調合剤なるとをとわず)を投与すること(大判昭7・2・24)
(10) 淋病患者に対しては疾病を診察したうえ尿道に硝子管を挿入して電気を通じ、神経痛患者に対しては湯桶に膝を入れしめて之に電気を通ずる行為(大判昭8・7・31)
(11) 吸角に蛭を入れ之を患部に差し当て吸い付かせて血液を吸収させた後その吸角に点火 したマッチを入れさらに血液を吸出する行為 (大判昭9・4・5)
(12) 眼疾患者に対し数十回にわたり自己発売に係る目薬の点眼および食塩水による眼の洗滌等の治療行為をなすこと(大判昭9・10・13)
(13) トラホーム患者を診察しその患部顆粒を紙捻に燈心を巻き付けたものを以て摩擦して破り血液をこれに吸収させた後ホーズキの汁をその患部に注入する行為(大判昭9・12・24)
(14) 月経不順の婦女に対し容態をきき病状を診断したうえ子宮鏡およびピンセットを使用して子宮内に通経丸と称する薬を充填する行為(大判昭10・11・11)
(15) 柔道整復術業者がレントゲン照射機を用いて人の負傷または疾患の部位を透視して骨折の有無、疾患の状態等を診察する行為(大判昭11・6・16)
(16) 高周波電流による透熱または紫外線放射を応用する療法(大判昭12・12・9)
(17) 診察をなさない治療行為または治療をなさない診察行為(大判昭13・5・19)
(18) 灸術営業者が灸術を施すにあたり膣内に子宮鏡を挿入して子宮を内診する行為(大判昭15・3・19)
(19) 火傷に対し診断のうえズルファミン剤の動脈注射等をなしたり腹膜炎に対し触診や聴診のうえビタカンフル注射等をなしたりする行為(仙台高判昭26・4・1)
(20) 内服薬の用法すなわち飲み方、飲ませ方の指示(大阪高判昭26・12・10)
(21) 患者に対し聴診、触診、指圧等を行ない、その方法がマッサージあん摩の類に似てこれと異なり、交感神経等を刺激してその興奮状態を調整するもので、医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行なえば、生理上危険ある程度に達しているとき(最判昭30・5・24)
(22) 医業類似行為業者が卵黄より精製した一種の薬品を注射し、または硫酸第二鉄等を含有する一種の鉱泉を服用させる行為(東京高判昭31・5・10)
(23) 血圧計を使用して血圧の高低を診断するとともに患者の症状を診察し、その病状に適応すると思料した売薬を指示販売する行為(名古屋高金沢支判昭33・4・8)
(24) 患者から容態を聞き患部に手を押し当てたのち、痼疾だの小心恐怖症だなどと告げ患部に湿布する行為(小松簡判昭34・1・31)
(25) 医業類似行為業者が疾病治療の目的で患者に対しバスハッピと称する一種の医薬品を塗布し、または塗布させるために交付する行為(東京高判昭36・12・13)
(26) 断食道場の入寮者に対し、断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねる行為(診療方法の一種である問診にあたる)(最判昭48・9・27)


(医行為とされた厚生省通知)

(1) 鍼灸術営業者、柔道整復師等が聴診器を使用して診察する行為(昭6・9・4衛発六九五号)
(2) 血液・血液型、血沈・糞便・尿・淋菌・梅毒等の検査結果に基づく病名の診断、眼底検査、聴力検査(オーディオ・メーターを使用する場合等生理学的検査の範囲に属する行為)、心電図検査、血圧測定、採血、予防接種等(昭47・6・1医事七七号・他)
(3) 眼鏡店において通常の検眼機を用いて行なう検眼(たとえば度数の測定)(昭29・11・4医収四二六号)
(4) コンタクトレンズを使用させるために行なう検眼、処方せんの発行、装用の指導等(昭33・8・28医発六八六号)
(5) 手術刀、縫合針などを使用して行なう二重瞼・口唇縫縮・隆鼻・植皮および植毛、にきび・あざ・しみおよびそばかすの除去(昭39・6・18医事四四号の二)
(6) 美容師が器具を用いて客の耳に穴をあけイヤリングを装着させる行為(昭47・10・3医事一二三号)
(7) 人体に対する作用ないし影響等からみて医師が行なうのでなければ危害が生ずるおそれのある整顔整容法(昭41・9・26医事一〇八号)
(8) 神経痛および高血圧治療と称し患者の腰部または背部にきゅうをすえ、同所をわずかに切開して表皮に接した細筋を針で引き出して刃物ですじを切るいわゆる「すじ切り治療」(昭45・9・2医事一四一号)
(9) 麻酔行為(昭42・5・23医事六七〇号・他)
(10) 処方せんの発行(昭24・2医収二〇八号)


(医行為に該当しないとされた判例)

(1) 自己の掌を患者の前面に差し出してその病気の有無を察知し、さらに患者より自覚症状を聞いてこれを確めたのち、患部に自己の掌を当てて治療するいわゆる「掌薫療法」(大判昭6・11・30)
(2) 患部を察知するため問診および触診をなし、紅草なる野生の植物より採取した紅色を帯びた液汁を刷毛をもって患部に塗布し、その上部を円木にて摩擦して皮膚に湿潤させて施術するいわゆる「紅療法」(大判昭8・7・8)
(3) 灸術営業者が必要に応じ聴診器、血圧計、体温器、音叉打診器、咽頭鏡、舌圧器、知覚計のごときその使用上被術者に危害を及ぼすおそれなき器械類を使用して、施灸に必要なる限度、詳言すれば禁忌症状の有無を知るとともに疾病の治療または予防の目的達成のため最も適切有効なる灸点を定める限度においてのみ診療をなすこと(大判昭12・5・5)
(4) 自己の右示指を患者の眼前に突き出しこれを凝視させながら上下左右に動かして病状を判断する行為(広島高岡山支判昭29・4・13)
(5) 病院における給食業務の一部の業者委託(福岡地決昭43・12・26)


(医行為に該当しないとされた厚生省通知)

(1) 握力、肺活量、血液、血液型、血沈、糞便(寄生虫のみ)、尿、淋菌および梅毒の各検査の結果判定(その結果に基づき病名診断等をしない
場合)(昭47・6・1医事七七号・他)
(2) 医師が継続的なインシュリン注射を必要と判断する糖尿病患者に対し、十分な患者教育および家族教育を行なったうえで、適切な指導お
よび管理のもとに患者自身(または家族)に指示して行なわれるインシュリンの自己注射(昭56・5・21医事三八号)
(3) 眼鏡店において眼鏡の需要者が自己の眼に適当な眼鏡を選択する場合の補助等人体に害を及ぼすおそれがほとんどない程度にとどまる検
眼(昭29・11・4医収四二六号)

 上記の判例や通知からもわかるように、過去に医師法違反などの認定において「医行為か否か」を判断したのは、そのほとんどは絶対的医行為への判断であり、医師の医業の遂行に当たっての相対的医行為(診療補助)に対する判断は少ない。
 これは重大なポイントであり、多くのホームページなどで歯科衛生士の職務範囲として論じられていることのほとんどは「絶対的医行為」としてであり、診療補助として「相対的医行為」がどの程度まで認められるのかという視点に欠けているケースが多い。
つまり「歯科衛生士の職務範囲」をあまり狭い視野でみることにおいて大きな利益は得られないので今後の論議が期待されるところである。

● その他の資料

A 注射に関すること
(1)予防接種:予防接種実施規則(昭和33.9.17厚生省令7号)により、「予防注射を行う者は医師に限る事」という行政指導がなされている。
(2)静脈注射:(昭和28.12.22最高裁)判例で「静脈注射は本来医師が行うべき「医行為」である。しかし、看護婦が医師の指示に基づいて行うか
ぎり違法ではない」という見解がとられている。看護婦が行うときには医師の指示により、又施術者が薬液の作用も熟知した上で看護婦でも
良いという判断である。
*静脈注射に関する慣行:
(1)技術的に困難な場合あるいは副作用の強い薬品などについては医師が行う。
(2)薬剤の皮膚反応テストの反応は医師自ら確認し判断する。


B 診療補助
診療の補助もあくまで診療の一部であり、医師の指示や監督があっても、無資格者(歯科助手)は行えない。また看護婦(歯科衛生士)等
の有資格者であっても、その行える行為には制限があり、たとえば放射線照射は診療放射線技師しか行えないので看護婦(歯科衛生士)で
あっても行うことができない。

C 研修医又は医学生の医行為
医学生が医行為についてはアメリカでは州法で、イギリスでは行政指導で定められているが、日本国内での対応においては定かではない。

D 問診は医行為に該当するとして無免許医業の成立を認めた判例
問診それ自体は危険ではないが,それによって断食療法を行わせる場合,その療法は医療にあたるとはいえないけれども,問診は医行為に
該当するとして無免許医業の成立を認めた(最判昭48・9・27)

E その他の具体的事例

1)握力および肺活量の検査はその結果の判定のみでは医行為に属さないが血圧測定は医行為と考えられる。
2)通常の検眼器等を利用して度数の測定を行うとか,コンタクトレンズを使用させるために検眼し,処方せんを発行し,装用の指導を行
うことは医業である。従って医師が上記のことを常時行う場合,病院または診療所でなければ行えない。
3)耳に穴をあけピアスをつける行為
4)麻酔行為 → 参考

F 厚生大臣の指示に従う義務
医師法第24条の2(歯科医師法第23条)

「厚生大臣は,公衆衛生上重大な危害を生ずるおそれがある場合において,その危害を防止するため特に必要があると認めるときは,医師
に対して医療又は保健指導に関して必要な指示をすることができる。厚生大臣は,前項の規定による指示をするに当っては,あらかじめ,
医道審議会の意見を聞かなければならない」
(例) 厚生大臣の指示「輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準」
    医務局長等の行政通達「ペニシリン製剤に関する規則」,「予防接種実施要領」など

 本条に基づく指示に違反して生じた事故については,医師の行なった診療行為そのものが,診療当時の医療水準に達せず,その結果,患
者に損害を生じたとすれば,その指示に法的拘束力がないにしても,なお民事・刑事の責任や行政処分の際に考慮される事情になりうるこ
とに注意を要する。

● 結論

 これらのことから現時点で「歯科衛生士の職務範囲」としての解釈として存在するのは次のようなものである。

■ 正当な医行為

他人の体に傷を付けたり(歯を抜く)、劇薬を飲ませたり(風邪薬を処方する)行為は刑法204条などにより暴行罪や傷害罪に問われる。しかし歯科医療という正当な業務の範囲で有れば犯罪にはならない。これは刑法35条「正当な業務による行為は罰しない。」による。

ではどの様な行為が正当な診療業務と認められるのか?それは
@ 治療を目的とすること
A 歯科医学上一般的に認められた方法であること(医療水準論
B 本人・保護者などの同意があること

を基本とします。ただし、緊急避難的な処置は除きますが。

そして診療の際には以下の義務があるとされています。

@ 善良なる管理者としての注意義務  
専門家としての歯科医師に求められる歯科医療水準に達した医療行為が要求される

A 説明義務                 
患者は自分の身体の状況に対して知る権利があり、歯科医師はこれに対して説明義務がある。ここで言う説明とは民法上の契約関係(民法645条の報告義務)から生じてくる最低限のものであり、インフォームドコンセントとしての説明とは異なる。

B 転医の勧告                
自らの医療水準で治療が不可能な患者に対して、適切な医療機関へ転医させる事を言う。
口腔外科や矯正科、そして一般医科への適切な紹介が必要とされる。
場合によっては補綴専門家への依頼もあり得る。

また、実際の診療に際しては以下のような義務があります。

@ 診療応召義務(歯科医師法第19条)
A 無診察治療の禁止(歯科医師法第20条)
B 保健指導義務(歯科医師法第22条)
C 診療録の記載と保存義務(歯科医師法第23条)
D 患者の秘密を守る義務(刑法第134条)

@ 応召義務の拒否は、正当な理由の有ったときのみ許される。問題は正当な理由とは何かである。

A 一般的に無診察治療とは、たとえば「歯が痛いと訴えて来院した患者が忙しくて待っていられないから薬だけでもほしいという申し出に対して、無診察で鎮痛剤を処方する。」等を言う。
以下の行為は無診察治療とは言わない。
(1) 通信回線を利用して医療情報を送ることによる診断。
(2) 患者を継続的に診療している場合で、患者の病状に著しい変化が無い場合で、電話によって病状の変化を尋ね、指示を行うこと。

B 診療行為以外ににも患者の療養の目的として、また健康の保持を目的とする保健指導を行わなければならない。

C 診療録は患者と医師との診療契約に基づく診療過程を記載するもので、その記載と保存は大事な職務である。
民事上は文書は証拠能力を有するので、診療録は重要な証拠とされる。


★ 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について

★ 150905: 経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課によると、「薬局店頭における唾液による口腔内環境チェックの実施に係る取扱いは歯科医業にあたらず」とのこと。なお厚生労働大臣の確認はとれているそうです。
・ 検査結果とコメントシートの通知については歯科医師法第17条に定める「歯科医業」に該当しないこと、また照会のあった製品については、疾病等の診断に使用されることが目的とされているものではないことから、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第4項に定める「医療機器」及び同条第14項に定める「体外診断用医薬品」に該当しない。

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