診療録の外部保存に関するガイドライン

 

最終更新日 2017/09/13

診療録等の外部保存に関するガイドライン
1.はじめに

 本ガイドラインは、「診療録等の保存を行う場所について」(平成14年3月29日医政発第0329003号・保発第0329001号厚生労働省医政局長
・保険局長通知)の運用の具体的指針として、「厚生労働省委託事業 高度医療情報普及推進事業」において、産業界及び学界の有識者に
よって構成される委員や、日本医師会等との協議・検討のもと、作成されたものである。
 外部保存とは、法令に基づく保存義務のある診療録ならびに診療に関する諸記録(以下「診療録等」という。)を、それらが作成された
病院または診療所以外の施設に保存することで、従来の紙やフィルムなどの媒体に保存する場合と、情報の作成の時点から電子情報として
作成し、電子媒体に保存する場合がある。
 明確に法律・規則には記載されてはいないものの、これまで、これらの診療録等は作成した医療機関が自らの責仕で、その医療施設内に
保存することが一般的であった。今回発出された通知は、保存場所に関する基準を明らかにするものである。

 また、今回の通知では、個人情報の保護について明確に定めている。
 近年の情報通信技術の発展により、電子化された情報を大量かつ迅速に処理することが可能となっているが、診療録等の個人情報につい
ては、その取扱いの態様によっては、個人の権利利益を損なうおそれがあることから、個人情報の保護について法的な整備を行うことが求
められている。

 医療分野における個人情報については、資格者に法令上の守秘義務を課すことにより、その保護を図ってきているところであるが、現在
国会に提出されている「個人情報の保護に関する法律案」では、医療機関等の事業者に対しても個人情報を取り扱うにあたっての義務が課
せられることなどが盛り込まれており、更にその保護が図られる予定である。
 法案の具体的な内容は、今後の国会審議に委ねられることになるが、情報通信技術が日々発展を続けている現在の状況や、「個人情報の
保護に関する法律案」「OECDプライバシーガイドライン」の趣旨に鑑みれば、法律が成立していない段階とはいえ、個人情報の保護を厳格
に図るよう努めなければならないのは当然のことといえる。
 診療録等を医療施設以外の場所に保存することは、個人情報の存在場所の移動や変更を行うものであることから、本ガイドラインでは、
外部保存を行う場合にはあらかじめ情報の当事者である患者に対し、院内掲示等を通じて外部保存を行っている旨の説明を行い、同意を得
る必要があるとしている。これは、医療が人の生命や健康に密接に関わるものであり、取り扱われる情報の保護についても特に慎重な対応
が求められることに配慮したものである。

なお、この取扱いは、法案が成立していない現段階において、十分に個人情報が保護されるよう配慮したものであり、法案の内容によって
は、今後変更する可能性があるので注意されたい。

2.対象となる記録

 今回発出された通知には、以下の記録が対象として記載されている。

1 医師法(昭和23年法律第201号)第24条に規定されている診療録
2 歯科医師法(昭和23年法律第202号)第23条に規定されている診療録
3 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第42条に規定されている助産録
4 医療法(昭和23年法律第205号)第21条、第22条及び第22条の2に規定されている診療に関する諸記録及び同法第22条及び第22条の2に規
定されている病院の管理及び運営に関する諸記録
5 歯科技工士法(昭和30年法律第168号)第19条に規定されている指示書
6 救急救命士法(平成3年法律第36号)第46条に規定されている救急救命処置録
7 保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)第9条に規定されている診療録等
8 歯科衛生士法施行規則(平成元年厚生省令第46号)第18条に規定されている歯科衛生士の業務記録


 なお、「診療録等の電子媒体による保存について」(平成11年4月22日厚生省健康政策局長・医薬安全局長・保険局長通知)においては、
「薬剤師法(昭和35年法律第146号)第28条に規定されている調剤録」と「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和32年厚生省令第16号
)第6条に規定されている調剤録」が電子保存の対象となっていたが、薬剤師法上調剤録は薬局に備えることが明記されているため、今回の
通知の対象とはなっておらず調剤録を薬局外に保存することはできない。

3.診療録等の外部保存を行う際の基準

 今回の通知では、基準を2つの場合に分けて示している。ひとつは電子媒体により外部保存を行う場合で、もうひとつは紙媒体のままで外
部保存を行う場合である。
 さらに電子媒体の場合、通知 第21.(2)で電気通信回線を通じて外部保存を行う場合が特に規定されていることから、実際には
1.電子媒体による外部保存で電気通信回線を通じて行う場合
2.電子媒体で磁気テープ、CD−R、DVD−R、MOなどの可搬型媒体で外部保存を行う場合
3.紙やフィルム等の媒体で外部保存を行う場合
の3つに分けて考える必要がある。

 このうち、1.電気通信回線を通じて外部保存を行う方法は、先進的で、医療機関や患者の利点も多い。一方、セキュリティ等に関する技
術や運用が完全に成熟しているわけではないことや、「個人情報の保護に関する法律案」が制定されていない現時点において、この方法に
よる外部保存を全面的に認めることは、技術的な事故や運用上の障害等の発生により、国民多数の拒絶反応をもたらし、ひいては、医療の
情報化や規制緩和の方向を後退させる危険性もあることから、慎重かつ着実に進めるべきである。
 通知では、医療施設であれば、電気通信回線を経由して、診療録等を外部施設に保存することが可能と記載されているが、実質的には安
全管理に関して、技術的にも情報学的にも卓越した知識を持つことが求められる。また、実施状況について、必要に応じ情報交換を行うな
ど、関係機関との連携を図りつつ、通知 第21.(2)に記述のあるように、技術や運用面の熟成、安全性の実証と社会的なコンセンサスを
確瀬した上で、今後の緩和を行う必要がある。

 一方、2.可搬型媒体で外部保存を行う場合、3.紙やフィルム等の媒体で外部保存を行う場合については、保管場所を医療施設等に限る
ものではなく、保管を専門に扱う業者や倉庫等においても、個人情報の保護等に十分留意して、実施することが可能である。


3−1電子媒体による外部保存で電気通信回線を通じて行う場合

3−1−A 概説
 現在の技術を十分活用しかつ注意深く運用すれば、電気通信回線を通じて、医療施設の外部に保存することが可能である。診療録等の外
部保存を受託する施設において、真正性を確保し、安全管理を適切に行うことにより、外部保存を委託する施設の経費節減やセキュリティ
上の運用が容易になる可能性がある。
 一方で情報の伝送において、電気通信回線を用いることの安全性の確保は医療分野で十分実
証されているとは言いがたい。
 すなわち、電気通信回線という、一般に管理が困難な状況においては、技術的に安全性の確保は可能ではあっても、こうした技術の医療
分野への応用については、今後の蓄積が期待されるところであり、社会的なコンセンサスも十分とはいえない。したがって、電気通信回線
を用いた外部保存の実施は慎重に進める必要があり、外部保存を受託する施設が医療法で規定される医療施設等に限定されている。
 電気通信回線を通じて外部保存を行う方法は、先進的で利点が多いが、セキュリティや通信技術およびその運用方法が十分成熟して、社
会に浸透しているとは限らないことから、情報の漏洩や医療上の問題等が発生し、社会的な不信を招いた場合は、結果的に医療の情報化を
後退させ、ひいては国民の利益に反することになりかねず、現時点では慎重かつ着実に進めるべきである。したがって通知の文面上は、医
療施設であれば電気通信回線を経由して、診療録等を電子媒体によって外部施設に保存することが可能であるが、実質的には安全管理に関
して技術的にも情報学的にも卓越した知識を持つことが求められる。実施状況について、必要に応じて、情報交換を行うなど、関係機関と
の連携を図りつつ、技術や運用面の熟成、安全性の実証と社会的なコンセンサスを確立した上で、今後の緩和を行う必要がある。


3−1−B「診療録等の外部保存を行う際の基準」

3−1−B−1電子保存の3基準の遵守
<通知事項>
   「平成11年通知2に掲げる基準(第1に掲げる記録の真正性、見読性及び保存性の確保をいう。)を満たさなければならないこと。」
(通知 第21(1))
<通知の背景と考え方>
 医療施設内に電子的に保存する場合に必要とされる真正性、見読性、保存性を確保することで概ね対応が可能と考えられるが、これに加
え、伝送時や外部保存を受託する施設における取扱いや事故発生時の対応について、注意する必要がある。


<通知の課題と対策>
<通知の課題>
 (1)電気通信回線や外部保存を受託する施設の障害等に対する真正性の確保
 (2)電気通信回線や外部保存を受託する施設の障害等に対する見読性の確保
 (3)電気通信回線や外部保存を受託する施設の障害等に対する保存性の確保
<対策>
(1)電気通信回線や外部保存を受託する施設の障害等に対する真正性の確保

@ 相互認証機能
   第三者が診療録等の外部保存の受託先の施設になりすまして、不正な診療情報を、外部保存の委託元の施設へ転送することは、診療
録等の改ざんとなる。また、第三者が受託先の施設になりすまして、診療情報を受け取ることは、診療情報の紛失あるいは漏洩となる。
   これを防ぐためには、外部保存の受託先の施設と外部保存の委託元の施設が、お互いに通信目的とする正当な相手かどうかを認識す
るための相互認証機能が必要である。

A 電気通信回線上で「改ざん」されていないことの保証機能
   可逆的な情報の圧縮・回復ならびにセキュリティ確保のためのタグ付けや暗号化・平文化などを除き、電気通信回線の転送途中で診
療情報が変化、改ざんされていないことを保証できること。
   例えば診療情報にメッセージ認証機能を付加して転送することが推奨される。

Bリモートログイン制限機能
   外部保存の受託先の施設や委託元の施設のサーバへのリモートログイン機能に制限を設けないで容認すると、ログインのためのパス
ワードが平文でLAN回線上を流れたり、ファイル転送プログラム中にパスワードがそのままの形でとりこまれたりすることにより、これが漏
洩する可能性がある。

また、認証や改ざん検知の機能をソフトウェアで行っている場合には、関連する暗号鍵が盗まれたり、認証や改ざん検知の機構そのものが
破壊されるおそれもある。また、一時保存しているディスク上の診療情報の不正な読みとりや改ざんが行われる可能性もある。他方、シス
テムメンテナンスを目的とした遠隔保守のためのアクセスも考えられる。
 リモートログイン機能を全面的に禁止してしまうと、遠隔保守が不可能となり、保守に要する時間など保守コストが増大する。適切に管
理されたリモートログイン機能のみに制限しなければならない。

(2)電気通信回線や外部保存を受託する施設の障害等による見読性の確保
  外部施設に保存を子」うことは、厳密な意味で見読性の確保を著しく難しくするように見える。しかし見読性は本来、「診療に用いる
のに支障がないこと。」と「監査等に差し支えないようにすること。」の2つの意味があり、これを両方とも満たすことが実質的な見読性の
確保と考えてよい。この際、診療上緊急に必要になることが予測される診療情報の見読性の確保については、外部保存先の施設が事故や災
害に陥ることを含めた十分な配慮が求められる。

@緊急に必要になることが予測される診療情報の見読性の確保
  ⇒「緊急に必要になることが予測される診療情報は、内部に保存するか、外部に保存しても複製または同等の内容を施設内に保持する
こと」

 診療に用いる場合、緊急に保存情報が必要になる場合を想定しておく必要がある。電気通信回線を経由して外部に保存するということは
、極限すれば必ず直ちにアクセスできることを否定することになる。これは地震やテロなどを考えれば容易に想定できるであろう。
 したがって、万が一の場合でも診療に支障がないようにするためには、代替経路の設定による見読性を確保しておくだけでは不十分であ
る。継続して診療を行う場合など、原本に直ちにアクセスすることが必要となるような診療情報を外部に保存する場合には、原本の複製ま
たは原本と実質的に同等の内容をもつ情報を、内部に備えておく必要がある。

A緊急に必要になるとまではいえない診療情報の見読性の確保
  ⇒「緊急に必要になるとまではいえない情報についても、ネットワークや施設の障害等に対応できるような措置を行っておくことが望
ましい。」
   診療終了後しばらくの問来院が見込まれない患者に係る診療情報など、緊急に診療上の必要が牛じるとまではいえない情報について
も、監査等において提示を求められるケースも想定されることから、できる限りバックアップや可搬型媒体による搬送経路の確保など、ネ
ットワーク障害や外部保存の受託先の施設の事故等による障害に対する措置を行っておくことが望ましい。

(3)電気通信回線や外部保存を受託する施設の障害等に対する保存性の確保

@外部保存を受託する施設での保存確認機能
  診療情報を転送している途中にシステムが停止したり、障害があって正しいデータが保存されない場合は、再度、外部保存の委託元の
施設からデータを転送する必要がでてくる。その為、外部保存の委託元の施設におけるデータを消去する等の場合には、外部保存の受託先
の施設において、改ざんされることのないデータベースへ保存されたことを確認してから行う必要がある。このため、外部保存の受託先の
施設におけるデータベースへの保存を確認した情報を受け取ったのち、委託元の施設における処理を適切に行う機能が必要である。

A標準的なデータ形式および転送プロトコルの採用
  システムの更新等にともなう相互利用性を確保するために、データの移行が確実にできるように、標準的なデータ形式を用いることが
望ましい。

Bデータ形式および転送プロトコルのバージョン管理と継続性確保

 保存義務のある期間中に、データ形式や転送プロトコルがバージョンアップまたは変更されることが考えられる。その場合、外部保存の
受託先の施設はその区別を行い、混同による障害を避けるとともに、以前のデータ形式や転送プロトコルを使用している施設が存在する間
は対応を維持しなくてはならない。

C電気通信回線や外部保存を受託する施設の設備の劣化対策
  電気通信回線や受託先の施設の設備の条件を考慮し、回線や設備が劣化した際にはそれらを更新する等の対策が必要である。

D電気通信回線や外部保存を受託する施設の設備の互換性確保
  回線や設備を新たなものに更新した場合、旧来のシステムに対応した機器が入手困難となり、記録された情報を読み出すことに支障が
生じるおそれがある。したがって、受託先の施設は、回線や設備の選定の際は将来の互換性を確保するとともに、システム更新の際には旧
来のシステムに対応し、安全なデータ保存を保証できるような互換性のある回線や設備に移行することが望ましい。


E情報保護機能
  故意または過失による情報の破壊がおこらないよう、情報保護機能を備えること。また、万一破壊がおこった場合に備えて、必要に応
じて回復できる機能を備えること。

3−1−B−2 外部保存を受託する施設の限定
<通知事項>
  「電気通信回線を通じて外部保存を行う場合にあっては、保存に係るホストコンピュータ、サーバ等の情報処理機器が医療法第1条の5
第1項に規定する病院又は同条第2項に規定する診療所その他これに準ずるものとして医療法人等が適切に管理する場所に置かれるものであ
ること。
 なお、この取扱いは、電子媒体により保存を行う場合、情報が瞬時に大量に漏洩する可能性があり、かつ、情報の漏洩源を特定しにくい
と考えられることを勘案したものであり、今後の情報技術の進展、個人情報保護に関する法整備の状況等を見つつ、引き続き検討し、必要
に応じて見直しを行う予定である。」(通知第2 1(2))

<通知の背景と考え方>
 概説で述べたように、電気通信回線を経由した外部保存を医療施設に制限すると同時に、将来の目標を明確に定めたものである。個人情
報保護に関する法律が整備されていない現状では、守秘義務のある医療従事者が診療録等の保存に責任を持つ必要があることから、通知で
は、病院、診療所および医療法人等が適切に管理する場所に特定している。


<通知の課題と対策>

<通知の課題>
(1)診療録等の外部保存を受託する施設

<対策>
(1)診療録等の外部保存を受託する施設
 @病院、診療所
   外部保存を受託する施設は、病院や診療所の内部で診療録等を保存する必要があり、病院や診療所の敷地外に保存することはできな
い。
 A医療法人等が適切に管理する場所
   医療法人等が適切に管理する場所とは、慎重かつ着実にネットワーク経由の外部保存を行っているという条件を示し、その一例とし
ては、すでに政府補助金等を利用し、実験的に医師会が管理する場所に外部保存を行っている場合があげられる。


(2)運用状況等の情報提供
  外部保存を受託する施設が病院や診療所であっても、通常の電子保存の場合に比べて大きな説明責任があると考えるべきである。また
、その運用状況等についての情報提供など、関係機関との連携を図ることが求められる。

3−1−B−3 個人情報の保護
<通知事項>
「患者のプライバシー保護に十分留意し、個人情報の保護が担保されること。」
(通知 第2 1(3))

<通知の背景と考え方>
 「個人情報の保護に関する法律案」は現時点で未成立であるが、医療において患者の個人情報保護が重要であることは法律の有無に左右
されない。法令上守秘義務のある医帥や看護帥等はもちろんのこと、法令上の守秘義務のない医療従事者(事務職員等)であっても、診療
録等を取り扱う場合には、患者の個人情報の保護を尊重しなければならないことは当然である。
「OECDプライバシーガイドライン」等、諸外国における個人情報保護の指針では、患者は自己の個人情報がどのように扱われているかを知
る権利があるとされている。
 したがって、外部保存を行う場合には、あらかじめ情報の当事者である患者に対し、院内掲示等を通じて外部保存を行っている旨の説明
を行い、同意を得る必要がある。
診療録等が医療施設の内部で保存されている場合は、医療施設の管理者(院長等)の統括によって、個人情報が保護されている。しかし電
気通信回線を通じて外部に保存する場合、委託元の医療施設の管理者の権限や責任の範囲が、自施設とは異なる他施設に及ぶために、より
一層の個人情報保護に配慮が必要である。

なお、患者の個人情報の保護等に関する事項は、診療録等の法的な保存期間が終了した場合や、外部保存の受託先施設との契約期間が終了
した場合でも、個人情報が存在する限り配慮される必要がある。また、バックアップ情報における個人情報の取扱いについても、同様の運
用体制が求められる。


<通知の課題と対策>
<通知の課題>
(1)診療録等の個人情報を電気通信回線で伝送する問の個人情報保護
(2)診療録等の外部保存を受託する施設内における個人情報保護
(3)外部保存実施に関する患者への説明と同意

<対策>
(1)診療録等の個人情報を電気通信回線で伝送する間の個人情報の保護
 @秘匿性の確保のための適切な暗号化
  ⇒「秘匿性確保のために電気通信回線上は適切な暗号化を行い転送すること」
   電気通信回線を通過する際の個人情報保護は、通信手段の種類によって、個別に考える必要がある。秘匿性に関しては専用線であっ
ても施設の出入り口等で回線を物理的にモニタすることで破られる可能性があり配慮が必要である。したがって電気通信回線を通過する際
の個人情報の保護を担保するためには、適切な暗号化は不可欠である。

 A通信の起点・終点識別のための認証
  ⇒「外部保存を委託する施設と受託する施設間の起点・終点の正当性を識別するために相互に認証を行うこと」
   通信手段によって、起点・終点の識別方法は異なる。例えば、インターネットを用いる場合は起点・終点の識別はIPパケットを見る
だけでは確実にはできない。起点・終点の識別が確実でない場合は、公開鍵方式や共有鍵方式等の確立された認証機構を用いてネットワー
クに入る前と出た後で委託元の施設と受託先の施設を確実に相互に認証しなければならない。たとえば、認証付きのVPN、SSL/TLSやISCLを
適切に利用することにより実現できる。
   なお、当然のことではあるが、用いる公開鍵暗号や共有鍵暗号の強度には十分配慮しなければならない。


(2)診療録等の外部保存を受託する施設内での個人情報保護
 @外部保存を受託する施設における診療情報へのアクセス禁止
   外部保存を受託した施設においては、診療録等の個人情報の秘密保持は厳格であるべきで、施設の管理者であっても、受託した診療
録等の個人情報に正当な理由なくアクセスすることができない仕組みを備えるべきである。

 A障害対策時のアクセス通知
   プログラムの異常等で保存データを救済する必要があるときなど、やむを得ない事情で、受託した診療録等の個人情報にアクセスし
なければならない場合は、自施設における診療録等の個人情報と同様の秘密保持を行うと同時に、アクセスする許可を予め外部保存の委託
元の施設に求めなければならない。

 Bアクセスログの完全性とアクセス禁止
   外部保存の受託先施設における保存データの安全性を確保するために、アクセスログを確認し、アクセスログの完全性を確立させる
ことが重要である。
   一方でログ情報には、特定の診療録等の有無が含まれることがあり、ログを閲覧することは個人情報の侵害になりうる。
   したがって、外部保存を受託する施設でのログ管理は、その完全性のみを保証することとし、システム設計上、または運用面でシス
テムの異常などのやむを得ない場合を除いて、内容にはアクセスしないことが求められる。また、ログ情報にアクセスした場合には、その
都度委託施設への報告を行うことが求められる。

 C外部保存を依頼する施設の監督責任
   外部保存の際の管理責任や説明責任については、ネットワーク管理者、機器やソフトウェアの製造業者にも応分の責任があり、契約
においてその責任分担を明確にしておかなければならないが、診療録等の個人情報の保護に関する最終的な責任は、当該診療録等を保存す
る法的義務のある委託元の施設が負わなければならない。したがって委託元の施設は、外部保存を委託する際に、受託先の施設内における
個人情報保護に関する対策が実施されることを契約等に含めるとともに、その実施状況を監督する必要がある。

(3)外部保存実施に関する患者への説明と同意
  診療録等の外部保存を委託する施設は、あらかじめ患者に対して、必要に応じて患者の個人情報が電気通信回線を経由し、特定の受託
先の施設に送られ、保存されることについて、その安全性やリスクを含めて院内掲示等を通じて説明し、同意を得る必要がある。

@ 診療開始前の同意
 患者から、病態、病歴などを含めた個人情報を収集する前に行われるべきであり、外部保存を行っている旨を院内掲示等を通じて周知し
、同意を得た上で診療を開始すべきである。患者は自分の個人情報が外部保存されることに同意しない場合には、その旨を申し出なければ
ならない。ただし、診療録等を電気通信回線を通じ外部に保存することに同意を得られなかった場合でも、医師法等で定められている診療
の応招義務には何ら影響を与えるものではなく、それを理由として診療を拒否することはできない。

A 患者本人の同意を得ることが困難であるが、診療上の緊急性が有る場合
意識障害や痴呆等で本人の同意を得ることが困難な場合で、診療上の緊急性がある場合はかならずしも事前の同意を必要としない。意識が
回復した場合には事後に同意を取ればよい。

B患者本人の同意を得ることが困難であるが、診療上の緊急性が特にない場合
 乳幼児の場合も含めて本人の同意を得ることが困難で、緊急性のない場合は、原則として親権者や保護者の同意を得る必要がある。親権
者による虐待が疑われる場合や保護者がいないなど、同意を得ることが困難な場合は、診療録等に、同意の取得が困難な理由を明記してお
くことが望まれる。

3−1−B−4 責任の明確化
<通知事項>
  「外部保存は、診療録等の保存の義務を有する病院、診療所等の責任において行うこと。また、事故等が発生した場合における責任の
所在を明確にしておくこと。」 (通知 第2 1(4))

<通知の背景と考え方>
 診療録等を電気通信回線等を通じて外部に保存する場合であっても、診療録等の真正性、見読性、保存性に関する責任は、保存義務のあ
る医療施設、すなわち委託元の施設にある。
 ただし、管理責件や説明責件は、実際の管理や説明の一部について、受託先の施設やネットワーク管理者、機器やソフトウェアの製造業
者と責任を分担することができ、この場合、一般にネットワークで結合されたシステムでは管理境界や責任限界が自明でない場合が多いこ
とから、文書等により、その責任分担を明確にしなければならない。結果責任は、患者に対しては委託元の施設が負うが、受託先の医療施
設等やこれらの施設と契約した電気通信回線提供事業者、機器やソフトウェアの製造業者は、委託元の施設に対して契約等で定められた責
任を負うことは当然であり、法令に違反した場合はその責任も負うことになる。


<課題と対策>
<通知の課題>
(1)電子保存の3条件に対する責任
(2)管理・責任体制の明確化
<対策>
(1)電子保存の3条件に対する責任
 @管理責任
   媒体への記録や保存、伝送等に用いる装置の選定、導入、および利用者を含めた運用および管理等に関する責任については、委託元
の施設が主体になって対応するという前提で、個人情報の保護について留意しつつ、実際の管理を、外部保存を受託する医療施設等や、こ
れらの施設と契約した電気通信回線提供事業者、機器やソフトウェアの製造業者に行わせることは問題がないと考えられる。

 A説明責任
   外部保存の目的や利用者を含めた保存システムの管理運用体制等について、患者や社会に対して十分に説明する責任については、委
託元の施設が主体になって対応する必要がある。この際、個人情報の保護について留意しつつ、運用体制に関する実際の説明については、
外部保存を受託する医療施設等や、これらの契約先の電気通信回線提供事業者、機器やソフトウェアの製造業者にさせることは問題がない
と考えられる。

 B結果責任
   電気通信回線を通じて伝送し、外部保存を行った結果に対する責任は、患者に対しては、委託元の医療施設が負うものである。ただ
し、委託元と受託先の施設や電気通信回線提供事業者等の間の契約事項に関しては、受託先の医療施設等や、これらの施設と契約した電気
通信回線提供事業者等が、委託元の施設に対して責任を負う必要があり、法令に違反した場合はその責任も負う。


(2)通信経路の各課程における責任の所在の明確化
 診療録等の外部保存に関する委託元の施設、受託先の施設および電気通信回線提供者の間で、次の事項について管理・責任体制を明確に
規定して、契約等を交わすこと。

@ 委託元の施設で発生した診療録等を、受託先の施設に保存するタイミングの決定と一連の外部保存に関連する操作を開始する動作
   A 委託元の施設が電気通信回線に接続できない場合の対処
   B 受託先の施設が電気通信回線に接続できなかった場合の対処
   C 電気通信回線の経路途中が不通または著しい遅延の場合の対処
   D 受託先の施設が受け取った保存情報を正しく保存できなかった場合の対処
   E 委託元の施設が、受託先の施設内の保存情報を検索できなかった場合および返送処理の指示が不成功であった場合の対処
   F 委託元の施設の操作とは無関係に、受託先の施設のシステムに何らかの異常があった場合の対処
   G 受託先の施設内で個人情報にアクセスした場合の秘密保持と委託機関への連結に関する事項、個人情報の取扱いに関して、患者
から照会等があった場合の対応
   H 伝送情報の暗号化に不具合があった場合の対処
   R 委託元の施設と受託先の施設の認証に不具合があった場合の対処
   J 障害が起こった場合に障害部位を切り分ける責任
   K 委託元の施設による受託先の施設における外部保存の取扱いについて監督する方法
   L 外部保存の委託先の施設に、患者から直接、照会や苦情、開示の要求があった場合の処置
   M 委託元の施設または受託先の施設が、外部保存を中止する場合の対処
   N 外部保存に関する契約終了後の診療録等の扱いの取り決め

3−1−C 留意事項

電気通信回線を通じて外部保存を行い、これを受託先の施設において可搬型媒体に保存する場合にあっては、3.2(電子媒体による外部保
存を可搬型媒体を用いて行う場合)に掲げる事項についても十分留意すること。

3−2 電子媒体による外部保存を可搬型媒体を用いて行う場合


3−2−A 概説
 可搬型媒体に電子的に保存した情報を外部に保存する場合、委託元の施設と受託先の施設はオンラインで結ばれないために、なりすまし
や盗聴、改ざんなどによる情報の大量漏洩や大幅な書換え等、電気通信回線上の脅威に基づく危険性は少ない。しかし一方で外部に保存さ
れた情報を即時に利用することはできないため、利点も少ない。しかし注意深く運用すれば真正性の確保は容易になる可能性がある。
 可搬型媒体による保存の安全性は、紙やフィルムによる保存の安全性と比べておおむね優れているといえる。媒体を目祝しても内容が見
えるわけではないので、搬送時の機密性は比較的確保しやすい。セキュリティMOなどのパスワードによるアクセス制限が可能な媒体を用い
ればさらに機密性は増す。
 したがって、一般的には次節の紙媒体による外部保存の基準に準拠していれば大きな問題はないと考えられる。しかしながら、可搬型媒
体の耐久性の経年変化については、今後とも慎重に対応していく必要があり、また、媒体あたりに保存される情報量が極めて多いことから
、媒体が遺失した場合に、紛失したり、漏洩する情報量も多くなるため、より慎重な取扱いが必要と考えられる。
 なお、診療録等のバックアップ等、法令で定められている保存義務を伴わない文書を外部に保存する場合についても、個人情報保護の観
点からは保存義務のある文書と同等に扱うべきである。


3−2−B「診療録等の外部保存を行う際の基準」


3−2−B−1電子保存の3基準の遵守
<通知事項>
 「平成11年通知2に掲げる三条件(第1に掲げる記録の真正性、見読性及び保存性の確保をいう。)を満たさなければならないこと。」(
通知 第2 1(1))

<通知の背景と考え方>
 診療録等を医療施設内に電子的に保存する場合に必要とされる真正性、見読性、保存性を確保することでおおむね対応が可能と考えられ
るが、これに加え、搬送時や外部保存の受託先の施設における取り扱いや事故発生時について、特に注意する必要がある。


<通知の課題と対策>
<通知の課題>
(1)搬送時や外部保存を受託する施設の障害等に対する真正性の確保
(2)搬送時や外部保存を受託する施設の障害等に対する見読性の確保


(3)搬送時や外部保存を受託する施設の障害等に対する保存性の確保
<対策>
(1)搬送時や外部保存を受託する施設の障害等に対する真正性の確保
 @委託元施設、搬送業者及び受託施設における可搬型媒体の授受記録を行うこと
  可搬型媒体の授受および保存状況を確実にし、事故、紛失や窃盗を防止することが必要である。また、他の保存文書等との区別を行う
ことにより、混同を防止しなければならない。
 A媒体を変更したり、更新したりする際に、明確な記録を行うこと


(2)搬送時や外部保存を受託する施設の障害等に対する見読性の確保


 @診療に支障がないようにすること
   患者の情報を可搬型媒体で外部に保存する場合、情報のアクセスに一定の搬送時間が必要であるが、患者の病態の急変や救急対応等
に備え、緊急に診療録等の情報が必要になる場合も想定しておく必要がある。
   一般に「診療のために直ちに特定の診療情報が必要な場合」とは、継続して診療を行っている場合であることから、継続して診療を
おこなっている場合で、患者の診療情報が緊急に必要になることが予測され、搬送に要する時間が問題になるような診療に関する情幸酌ま
、あらかじめ内部に保存するか、原本を外部に保存しても、原本の複製または原本と実質的に同等の内容を持つ情報を委託元の施設内に保
管しておかなければならない。

 A監査等に差し支えないようにすること
   監査等は概ね事前に予定がはっきりしており、緊急性を求められるものではないことから、搬送に著しく時間を要する遠方に外部保
存しない限りは、問題がないと考えられる。

(3)搬送時や外部保存を受託する施設の障害等における保存性の確保

@ 標準的なデータ形式の採用
   システムの更新等にともなう相互利用性を確保するために、データの移行が確実にできるように、標準的なデータ形式を用いること
が望ましい。

 A媒体の劣化対策
   媒体の保存条件を考慮し、例えば、磁気テープの場合、定期的な読み書きを行う等の劣化対策が必要である。

B媒体および機器の陳腐化対策
  媒体や機器が陳腐化した場合、記録された情報を読み出すことに支障が生じるおそれがある。したがって、媒体や機器の陳腐化に対応
して、新たな媒体または機器に移行することが望ましい。


3−2−B−2 個人情報の保護
<通知事項>
 「患者のプライバシー保護に十分留意し、個人情報の保護が担保されること。」(通知 第2 1(3))

<通知の背景と考え方>
「個人情報の保護に関する法律案」は現時点で未成立であるが、医療において患者の個人情報保護が重要であることは法律の有無に左右さ
れない。法令上守秘義務のある医師や看護師等はもちろんのこと、法令上の守秘義務のない医療従事者(事務職員等)であっても、診療録
等を取り扱う場合には、患者の個人情報の保護を尊重しなければならないことは当然である。
「OECDプライバシーガイドライン」等、諸外国の個人情報保護の指針では、患者は、自己の個人情報がどのように扱われているかを知る権
利があるとされている。
 したがって外部保存を行う場合は、あらかじめ情報の当事者である患者に対し、院内掲示等を通じて外部保存を行っている旨の説明を行
い、同意を得る必要がある。
診療録等が医療機関において保存される場合は、医療施設の管理者(院長等)の統括によって、医療施設内部で個人情報保護を確保されて
いる。
 しかし、診療録等を可搬型媒体によって外部に保存する場合は、委託元の医療施設の管理者の権限や責任の範囲が、自施設とは異なる他
施設に及ぶため、より一層の個人情報保護に配慮が必要である。
 なお、患者の個人情報の保護等に関する事項は、診療録等の法的な保存期間が終了した場合や、外部保存の受託先施設との契約期間が終
了した場合でも、個人情報が存在する限り配慮される必要がある。また、バックアップ情幸削こおける個人情報の取扱いについても、同様
の運用体制が求められる。


<通知の課題と対策>
<通知の課題>
(1)診療録等の記録された可搬型媒体が搬送される際の個人情報保護
(2)診療録等の外部保存を受託する施設内における個人情報保護
(3)外部保存実施に関する患者への説明と同意

<対策>
(1) 診療録等の記録された可搬型媒体が搬送される際の個人情報保護
   診療録等を可搬型媒体に記録して搬送する場合は、なりすましや盗聴、改ざんなどによる情報の大量漏洩や大幅な書換え等、電気通
信回線上の脅威に基づく危険性は少ないが、一方、可搬型媒体の遺失や他の搬送物との混同について、注意する必要がある。

@診療録等を記録した可搬型媒体の遺失防止
    運搬用車両を施錠したり、搬送用ケースを封印するなどの処置を取ることによって、遺失の危険性を軽減すること。

A診療録等を記録した可搬型媒体と他の搬送物との混同の防止
    他の搬送物との混同が予測される場合には、他の搬送物と別のケースや系統に分けたり、同時に搬送しないことによって、その危
険性を軽減すること。

B 搬送業者との守秘義務に関する契約
    診療録等を記録した可搬型媒体を搬送する業者は、「個人情報の保護に関する法律案」が成立していない現段階においては、法令
上の守秘義務を負わないことから、外部保存を委託する医療施設と受託する施設、搬送業者の問での責任分担を明確化するとともに、守秘
義務に関する事項等を契約上明記すること。

(2) 診療録等の外部保存を受託する施設内における個人情報保護
   受託先の施設が、委託元の施設からの求めに応じて、保存を引き受けた診療録等における個人情報を検索し、その結果等を返送する
サービスを行う場合や、診療録等の記録された可搬型媒体の授受を記録する場合、受託先の施設に障害の発生した場合等に、診療情報にア
クセスをする必要が発生する可能性がある。このような場合には、次の事項に注意する必要がある。

@ 外部保存を受託する施設における診療情報へのアクセスの禁止
    診療録等の外部保存を受託する施設においては、診療録等の個人情報の保護を厳格に行う必要がある。受託先の施設の管理者であ
っても、受託した個人情幸削こ、正当な理由なくアクセスできない仕組みが必要である。

A障害発生時のアクセス通知
    診療録等を保存している設備に障害が発生した場合等で、やむをえず診療情報にアクセスをする必要がある場合も、自施設におけ
る診療録等の個人情報と同様の秘密保持を行うと同時に、外部保存を委託した施設に許可を求めなければならない。

B外部保存を受託する施設との守秘義務に関する契約
    診療録等の外部保存を受託する施設は、法令上の守秘義務を負わないことから、委託元の医療施設と受託先の施設、搬送業者との
間での責任分担を明確化するとともに、守秘義務に関する事項等を契約に明記する必要がある。

C外部保存を委託する施設の責任
    診療録等の個人情報の保護に関する責任は、最終的に、診療録等の保存義務のある委託元の医療施設が責任を負わなければならな
い。したがって委託元の医療施設は、上記の受託先の施設における個人情報の保護の対策が実施されることを契約等で要請し、その実施状
況を監督する必要がある。


(3) 外部保存実施に関する患者への説明と同意

  診療録等の外部保存を委託する施設は、あらかじめ患者に対して、患者の個人情報が可搬型媒体に記録され、特定の受託先施設等に搬
送され、保存されることについて、その安全性とリスクを含めて院内掲示等を通じて説明し、同意を得る必要がある。


@診療開始前の同意
    患者から、病態、病歴等を含めた個人情報を収集する前に行われるべきであり、外部保存を行っている旨を院内掲示等を通じて周
知し、同意を得た上で、診療を開始するべきである。
   ただし、診療録等を外部に保存することに同意を得られなかった場合でも、医師法等で定められている診療の応召義務には何ら変更
がなく、それを理由として診療を拒否することはできない。

A患者本人の同意を得ることが困難であるが、診療上の緊急性がある場合
    意識障害や痴呆等で本人の同意を得ることが困難な場合で、診療上の緊急性がある場合は、かならずしも事前の同意を必要としな
いと考えられる。意識が回復した場合には事後に同意を取ればよい。

B患者本人の同意を得ることが困難であるが、診療上の緊急性が特にない場合
    乳幼児を含めて、患者本人の同意を得ることが困難で、診療上の緊急性のない場合は、原則として親権者や保護者の同意を得る必
要がある。親権者による虐待が疑われる場合や保護者がいないなど、患者以外の同意を得ることも困難な場合は、診療録等に、同意の取得
が困難な理由を明記しておくことが望まれる。


3−2−B−3 責任の明確化
<通知事項>
  「外部保存は、診療録等の保存の義務を有する病院、診療所等の責任において行うこと。また、事故等が発生した場合における責任の
所在を明確にしておくこと。」 (通知 第2 1(4))

<通知の背景と考え方>
 診療録等を電子的に記録した可搬型媒体で外部の施設に保存する場合であっても、診療録等の真正性、見読性、保存性に関する責任は保
存義務のある医療施設、すなわち委託元の施設にある。
 管理責任や説明責任については、実際の管理や部分的な説明の一部を受託先の施設や搬送業者との間で責任を分担することについて問題
がないと考えられる。
 また結果責任については、患者に対する責任は、委託元の医療施設が負うものであるが、受託先の施設や搬送業者等は、委託元の施設に
対して、契約等で定められた責任を負うことは当然であるし、法令に違反した場合はその責任も負うことになる。

<通知の課題と対策>
<通知の課題>
(1)電子保存の3条件に対する責任の明確化
(2)事故等が発生した場合における責任の所在
<対策>
(1)電子保存の3条件に対する責任の明確化
  @管理責任
    媒体への記録や保存等に用いる装置の選定、導入、および利用者を含めた運用および管理等に関する責任については、委託元の施
設が主体になって対応するという前提で、個人情報の保護について留意しつつ、実際の管理を、搬送業者や受託先の施設に行わせることは
問題がないと考えられる。
  A説明責任
    利用者を含めた保存システムの管理運用体制について、患者や社会に対して十分に説明する責任については、委託元の施設が主体
になって対応するという前提で、個人情報の保護について留意しつつ、実際の説明を、搬送業者や受託先の施設にさせることは問題がない
と考えられる。
 B結果責任
    可搬型媒体で搬送し、外部保存を行った結果に対する責任は、患者に対しては、委託元の医療施設が負うものである。ただし、委
託元の施設と受託先の施設または搬送業者の間の契約事項に関しては、受託先の施設や搬送業者等が、委託元の施設に対して責任を負う必
要があり、法令に違反した場合はその責任も負うことになる。


(2)事故等が発生した場合における責任の所在
   診療録等を外部保存に関する委託元の施設、受託先の施設および搬送業者の間で、次の事項について管理・責任体制を明確に規定し
て、契約等を交わすこと。

@ 委託元の施設で発生した診療録等を、外部施設に保存するタイミングの決定と一連の外部保存に関連する操作を開始する動作
A 委託元の施設と搬送(業)者で可搬型媒体を授受する場合の方法と管理方法
B 事故等で可搬型媒体の搬送に支障が生じた場合の対処方法
C 搬送中に秘密漏洩があった場合の対処方法
D 受託先の施設と搬送(業)者で可搬型媒体を授受する場合の方法と管理方法
E 受託先の施設で個人情報を用いた検索サービスを行う場合、作業記録と監査方法、取扱い職員の退職後も含めた秘密保持に関する規定
、秘密漏洩に関して患者からの照会があった場合の責任関係
F 受託先の施設が、委託元の施設の求めに応じて可搬型媒体を返送することができ なくなった場合の対処方法
G 外部保存の委託先の施設に、患者から直接、照会や苦情、開示の要求があった場合の対処方法


3−3 紙媒体のままで外部保存を行う場合


3−3−A概説
 紙媒体とは、紙だけを指すのではなく、]線フィルムなどの電子媒体ではない物理媒体も含む。
検査技術の進歩等によって、医療施設では保存しなければならない診療録等が増加しており、その保存場所の確保が困難な施設も多い。本
来、法令に定められた診療録等の保存は、証拠性と同時に、有効に活用されることを目指すものであり、整然と保存されるべきものである
。 今回の通知により、一定の条件の下に、従来の紙媒体のままの診療録等を当該医療施設以外の場所に保存することが可能になった。こ
の場合の保存場所も可搬型媒体による保存と同様、医療施設に限定されていない。
 しかしながら、診療録等は機密性の高い個人情報を含んでおり、また必要な時に遅滞なく利用できる必要がある。保存場所が当該医療施
設以外になることは、個人情報が存在する場所が拡大することになり、外部保存に係る運用管理体制を明確にしておく必要がある。また保
存場所が離れるほど、診療録等を搬送して利用可能な状態にするのに時間がかかるのは当然であり、診療に差し障りのないように配慮しな
ければならない。
 さらに、紙やフィルムの搬送は注意深く行う必要がある。可搬型媒体は内容を見るために何らかの装置を必要とするが、紙やフィルムは
単に露出するだけで、個人情報が容易に漏出するからである。


3−3−B「診療録等の外部保存を行う際の基準」
3−3−B−1利用性の確保
<通知事項>
 「第1に掲げる記録が診療の用に供するものであることにかんがみ、必要に応じて直ちに利用できる体制を確保しておくこと。」(通知 
第2 2(1))
<通知の背景と考え方>
一般に、診療録等は、患者の診療や説明、監査、訴訟等のために利用するが、あらゆる場合を想定して、診療録等をいつでも直ちに利用で
きるようにすると解釈すれば、事実上、外部保存は不可能となる。
診療の用に供するという観点から考えれば、直ちに特定の診療録等が必要な場合としては、継続して診療を行っている患者など、緊急に必
要になることが容易に予測される場合が挙げられる。


<通知の課題と対策>
<通知の課題>
(1)診療録等の搬送時間

(2)保存方法および環境
<対策>
(1)診療録等の搬送時間
 外部保存された診療録等を診療に用いる場合、搬送の遅れによって診療に支障が生じないようにする対策が必要である。
 @外部保存の場所
   搬送に長時間を要する施設に外部保存を行わないこと。
 A複製や要約の保存
   継続して診療をおこなっている場合などで、緊急に必要になることが予測される診療録等は内部に保存するか、外部に保存する場合
でも、診療に支障が生じないようコピーや要約などを内部で利用可能にしておくこと。
   また継続して診療している場合であっても、例えば入院加療が終了し、適切な退院時要約が作成され、それが利用可能であれば、入
院時の診療録等自体が緊急に必要になる可能性は低下する。ある程度時間が経過すれば外部に保存しても診療に支障をきたすことはないと
  考えられる。

(2)保存方法および環境
@ 診療録等の他の保存文書等との混同防止
   診療録等を必要な利用単位で選択できるよう、他の保存文書等と区別して保管し、管理しなければならない。

A適切な保存環境の構築
   診療録等の劣化、損傷、紛失、窃盗等を防止するために、適切な保存環境・条件を構築・維持しなくてはならない。

3−3−B−2 個人情報の保護
<通知事項>
「患者のプライバシー保護に十分留意し、個人情報の保護が担保されること。」
(通知 第2 2(2))
<通知の背景と考え方>
「個人情報の保護に関する法律案」は現時点で未成立であるが、医療において患者の個人情報保護が重要であることは法律の有無に左右さ
れない。法令上守秘義務のある医師や看護師等はもちろんのこと、法令上の守秘義務のない医療従事者(事務職員等)であっても、診療録
等を取り扱う場合には、患者の個人情報の保護を尊重しなければならないことは当然である。
 OECDのプライバシーガイドライン等、広く受け入れられている個人情報保護の指針では、患者は、自己の個人情報がどのように扱われて
いるかを知る権利があるとされている。したがって外部保存を行う場合は、外部に保存していることをあらかじめ患者に通知しておく必要
がある。
診療録等が医療施設の内部でにおいて保存される場合は、医療施設の管理者(院長等)の統括によって、個人情報が保護されている。
 しかし、診療録等を外部に保存する場合は、委託元の医療施設の管理者の権限や責任の範囲が、自施設とは異なる他施設に及ぶため、よ
り一層の個人情報保護に配慮が必要である。
 なお、患者の個人情報の保護等に関する事項は、診療録等の法的な保存期間が終了した場合でも、個人情報が存在する限り配慮される必
要がある。


<通知の課題と対策>
<通知の課題>
(1)診療録等が搬送される際の個人情報保護
(2)診療録等の外部保存を受託する施設内における個人情報保護
(3)外部保存実施に関する患者への説明と同意
<対策>
(1)診療録等が搬送される際の個人情報保護
 診療録等の搬送は遺失や他の搬送物との混同について、注意する必要がある。
  @診療録等の封印と遺失防止
    診療録等は、目視による情報の漏出を防ぐため、運搬用事両を施錠したり、搬送用ケースを封印すること。また、診療録等の授受
の記録を取るなどの処置を取ることによって、その危険性を軽減すること。


  A診療録等の搬送物との混同の防止
    他の搬送物との混同が予測される場合には、他の搬送物と別のケースや系統に分けたり、同時に搬送しないことによって、危険性
を軽減すること。



 B搬送業者との守秘義務に関する契約
    診療録等を搬送する業者は、「個人情報の保護に関する法律案」が成立していない現段階においては、法令上の守秘義務を負わな
いことから、委託元の医療施設と受託先の施設、搬送業者の間での責任分担を明確化するとともに、守秘義務に関する事項等を契約上、明
   記すること。


(2)診療録等の外部保存を受託する施設内における個人情報保護
  診療録等の外部保存を受託する施設においては、依頼元の施設からの求めに応じて、診療録等の検索を行い、必要な情報を返送するサ
ービスを実施する場合、また、診療録等の授受の記録を取る場合などに、診療録などの内容を確認したり、患者情報を閲覧する可能性が生
じる


 @外部保存を受託する施設内で、患者の個人情報を閲覧する可能性のある場合
   診療録等の外部保存を受託し、検索サービス等を行う施設は、サービスの実施に最小限必要な情報の閲覧にとどめ、その他の情報は
、閲覧してはならない。
  また、情報を閲覧する者は特定の担当者に限ることとし、その他の者が閲覧してはならない。
  さらに、外部保存を受託する施設は、医療法による守秘義務等を負わないことから、委託元の医療施設と受託先の施設、搬送業者の問
で、守秘義務に関する事項や、支障があった場合の責任体制等について、契約を結ぶ必要がある。


 A外部保存を受託する施設内で、患者の個人情報を閲覧する可能性のない場合
   診療録等の外部保存を受託する施設は、もっぱら搬送ケースや保管ケースの管理のみを実施すべきであり、診療録等の内容を確認し
たり、患者の個人情報を閲覧してはならない。
   また、これらの事項について、委託元の医療施設と受託先の施設、搬送業者の間で契約を結ぶ必要がある。


 B外部保存を委託する施設の責任
   診療録等の個人情報の保護に関する責任は、最終的に、診療録等の保存義務のある委託元の医療施設が責任を負わなければならない
。したがって委託元の医療施設は、上記の受託先の医療施設における個人情報の保護の対策が実施されることを契約等で要請し、その実施
状況を監督する必要がある。

(3)外部保存実施に関する患者への説明と同意
  診療録等の外部保存を委託する施設は、あらかじめ患者に対して、患者の診療録等が外部の受託先の施設等に搬送され、保存されるこ
とについて、その安全性とリスクを含めて院内掲示等を通じて説明し、同意を得る必要がある。


 @診療開始前の同意
   患者から、病態、病歴等を含めた個人情報を収集する前に行われるべきであり、外部保存を行っている旨を院内掲示を通じて周知し
、同意を得た上で、診療を開始するべきである。
   ただし、診療録等を外部に保存することに同意を得られなかった場合でも、医師法等で定められている診療の応召義務には何ら変更
がなく、それを理由として診療を拒否することはできない。

A患者本人の同意を得ることが困難であるが、診療上の緊急性がある場合
  意識障害や痴呆等で本人の同意を得ることが困難な場合で、診療上の緊急性がある場合は、かならずしも事前の同意を必要としないと
考えられる。意識が回復した場合には事後に同意を取ればよい。


B患者本人の同意を得ることが困難であるが、診療上の緊急性が特にない場合
  乳幼児を含めて、患者本人の同意を得ることが困難で、診療上の緊急性のない場合は、原則として親権者や保護者の同意を得る必要が
ある。親権者による虐待が疑われる場合や保護者がいないなど、患者以外の同意を得ることも困難な場合は、診療録等に、同意の取得が困
難な理由を明記しておくことが望まれる。


3−3−B−3 責任の明確化
<通知事項>
 「外部保存は、診療録等の保存の義務を有する病院、診療所等の責任において行うこと。
 また、事故等が発生した場合における責任の所在を明確にしておくこと。」(通知 第2 2(3))

<通知の背景と考え方>
 診療録等を外部の施設に保存する場合であっても、診療録の保存に関する責任は保存義務のある医療施設、すなわち委託元の施設にある

 管理責任や説明責任については、実際の管理や部分的な説明の一部を受託先の施設や搬送業者との間で責任を分担することで問題がない
と考えられる。
 また結果責任については、患者に対する責任は委託元の医療施設が負うものであるが、受託先の施設や搬送業者等は、委託元の施設に対
して、契約等で定められた責任を負うことは当然であるし、法令に違反した場合はその責任も負うことになる。


<通知の課題と対策>
<通知の課題>
(1)責任の明確化
(2)事故等が発生した場合における責任の所在
<対策>
(1) 責任の明確化

@管理責任
   診療録等の外部保存の運用および管理等に関する責任については、委託元の施設が主体になって対応するという前提で、個人情報の
保護について留意しつつ、実際の管理を、搬送業者や受託先の施設に行わせることは問題がないと考えられる。


A説明責任
    利用者を含めた管理運用体制について、患者や社会に対して十分に説明する責任については委託元の施設が主体になって対応する
という前提で、個人情報の保護について留意しつつ、実際の説明を、搬送業者や受託先の施設にさせることは問題がないと考えられる。


B結果責任
    診療録等を搬送し、外部保存を行った結果に対する責任は、患者に対しては、委託元の医療施設が負うものである。ただし、委託
元の施設と受託先の施設や搬送業者等の間の契約事項に関して、受託先の施設や搬送業者等が、委託元の施設に対して責任を負う必要があ
り、法令に違反した場合はその責任も負うことになる。

(2)事故等が発生した場合における責任の所在
 診療録等を外部保存に関する委託元の施設、受託先の施設および搬送業者の問で、次の事項について管理・責任体制を明確に規定して、
契約等を交わすこと。

   @ 委託元の施設で発生した診療録等を、外部施設に保存するタイミングの決定と一連の外部保存に関連する操作を開始する動作
   A 委託元の施設と搬送(業)者で診療録等を授受する場合の方法と管理方法
   B 事故等で診療録等の搬送に支障が生じた場合の対処方法
   C 搬送中に秘密漏洩があった場合の対処方法
   D D 受託先の施設と搬送(業)者で診療録等を授受する場合の方法と管理方法。
   E 受託先の施設で個人情報を用いた検索サービスを行う場合、作業記録と監査方法
     取扱い職員の退職後も含めた秘塘保持に関する規定、秘鐘漏洩に関して患者から照会があった場合の責任関係
   F 受託先の施設が、委託元の施設の求めに応じて診療録等診療録等を返送することができなくなった場合の対処方法
   G 外部保存の委託先の施設に、患者から直接、照会や苦情、開示の要求があった場合の対処方法

3−4 留意事項について
<通知事項>
1.外部保存を行う病院、診療所等の管理者は、運用管理規定を定め、これにしたがい実施すること。なお、すでに平成11年通知により運用
管理規定を定めている場合は、適宜これを修正すること。

 2.1の運用管理規定の作成にあたっては、平成11年通知3(2)にあげられている事項を定めること。通知 第3 1、2)

<通知の背景と考え方>
 通知の留意事項には運用管理規程を定めることが記載されている。管理責任や説明責任を果たすためには運用管理規程はきわめて重要で
あり、運用管理規程は必ず定めなければならない。
なお、すでに電子保存の運用管理規定を定めている場合には、外部保存に対する項目を適官修正・追加等すれば足りると考えられる。


<課題と対策>
 運用管理規程にはかならず以下の項目が含まれる必要がある。
  @ 理念
  A 院内の体制、外部保存に関わる院外の人および施設
  B 契約書・マニュアル等の文書の管理
  C 機器を用いる場合は機器の管理
  D 患者等への説明と同意を得る方法
  E 監査
  F 苦情の受け付け窓口

3−5 外部保存契約終了時の処理について


 診療録等が高度な個人情報であるという観点から、外部保存を終了する場合には一定の配慮を必要とする。
 注意すべき点は、診療録等を外部に保存していること自体が患者の同意のもとに行われていることである。
これまで診療録等の保存に関しては法令に基づいて行われるものであり、保存の期間や保存期間終了後の処理について患者の同意をとって
きたわけではない。
 しかし外部保存の場合、保存場所が外部であることは法令の要請ではない。個人情報の存在場所の変更は個人情報保護の観点からは重要
な事項であり、このガイドラインでも外部保存には原則として患者の同意が必要としている。保存の同意には何らかの期限が示されている
はずであり、外部保存の終了もこの同意に基づいて行われなければならない。
 期限には具体的な期日が指定されている場合もありえるし、一連の診療の終了後○○年といった一定の条件が示されていることもありえ
る。
 いずれにしても診療録等の外部保存を委託する施設は、受託先の施設に保存されている診療録等を定期的に調べ、終了しなければならな
い診療録等は速やかに処理を行う必要がある。同意した期間を超えて個人情報を保持すること自体が個人情報の保護上問題になりうること
に留意しなければならない。
 紙媒体や可搬型媒体での外部保存は、原則として上記の点に注意すれば大きな問題はない。
 ただし患者の個人情報に関する検索サービスを実施している場合は、検索のための台帳やそれに代わるもの、および検索記録も機密保持
できる状態で廃棄しなければならない。
電気通信回線を通じて外部保存する場合は、外部保存システム自体も一種のデータべ−スであり、インデックスファイル等も含めで慎重に
廃棄しなければならない。また電子媒体の場合はバックアップファイルについても同様の配慮が必要である。

4 保存義務のない診療録等の外部保存について

 今回の通知は法的に保存義務のある診療録および診療に関する諸記録の外部保存について述べたものであり、保存義務のない記録につい
ては対象外である。しかし、通知に強調されている個人情報の保護については、法的に保存義務があるなしに関わらず留意しなければなら
ないことは明白である。このことから、法的に保存義務のない記録等を外部保存する場合であっても、本ガイドラインの取扱いに準じた形
で保存がなされることが望ましい。

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