医療情報の電磁保存

 

最終更新日 2017/09/13

 

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 日本医療情報学会の見解によると、法的に保存義務のある診療に関わる諸記録および帳簿は以下の要件を満たすよう電子保存を推進して行く必要があるとのことである。

その要件として

1.記録された情報が正規の手続きで作成されたものであることが証明されること。(真正性)
2.記録された情報が作成された時点と同じ意味および形式で定められた期間保存されること。(保存性)
3.記録された情報を正当に利用する要求があった場合、速やかにその要求に対応できること。(見読性)
4.一連の記録の中で電子保存された記録とそうでない記録が存在する場合、両者の関係が明瞭に把握できること。

1.の真正性の確保の要件としては、その記録が「記録内容」「記録者情報」「記録環境情報」の3つの要素を持っていることである。

記録内容:記録そのものをさす
記録者情報:記録した人及び医療機関を特定する情報
記録環境情報:記録日・記録を保管する医療機関・記録のシステム種別

2.記録された情報が作成された時点と同じ意味および形式で定められた期間保存されること。

 記録の完全性を確保するためには、保存後の記録の変更を一切禁止し(追記は可)、記録が不用意に分断されないことを保証し、また環境や技術の変化の影響がなく、保存された時点とまったく同一の情報として再現されることが満たされなければならない。記録の訂正などの改変の必要が生じた場合は新たな電子的記録として作成し、変更前の電子的記録との新旧関係が管理される必要がある。諸般の事情で記録された媒体が使用不可能になることが予測される場合は記録の意味や形式といった内容を維持して媒体を変換しなければならない(例えば、現在MOに医療情報を保存していると仮定して、将来MOそのものが市場から消え去った時代に於いては、その時代のメディアに置き換えて保存する必要があるとのことである。そして実務上はデータのバックアップが一番重要なことであろう)

3.記録された情報を正当に利用する要求があった場合、速やかにその要求に対応できること。

 可用性は診療に関する記録全般で重要であり、電子的保存記録は、以下の状況のいずれにおいても速やかに、真正性を保証する情報を含めて画面上または書面に明瞭な形式で出力できなければならない。

1)診療上必要とするとき(日常の診療における利用に於いて)
2)患者から要求があったとき(例えばカルテの開示)
3)行政上必要とするとき(指導や監査など係官の要求に対して)
4)その他、特別な理由により必要とするとき(例えば裁判の証拠保全として)

 なお、電子保存によって記録の可用性は飛躍的に向上することが予想される。したがってプライバシーの保護に対するより一層の注意が払われなければならない。

4.一連の記録の中で電子保存された記録とそうでない記録が存在する場合、両者の関係が明瞭に把握できること。

 電子保存への移行期や、何らかの理由で電子保存が著しく困難な情報がある場合でも記録の一貫性は確保されなければならない。時間的または意味的に継続性のある記録に関して、電子的に保存したものと、電子的に保存しないものの両方がある場合には、その関連がシステムにおいて、または運用において明確に把握できるようにする必要がある。(代表例としてカルテの内容は電磁保存されているが、外注の臨床検査データなどは用紙に保管される場合には何らかの手段で両者の関連性を確保すると言うこと)

 診療情報の電磁保存のガイドラインは以上の様なものである。それでは何のために診療情報の電磁保存が必要なのであろうか

(1) 受診者の利便性

領収書、明細書の発行はもとより、診断書、その他の文書の円滑的な利用、そして受診者への医療情報の提供などに於いて、医療情報(カルテ)の電磁保存は避けて通れない。

(2) 医事部門の業務の効率化

レセプトの打ちだしや、診断書、処方箋の発行などの効率化

(3) 医療自体の質の向上

一見診療情報と医療の質とは無関係に思えるが、これらは密接に関係しているのである。適切で正確な診療情報の積み重ねはEBMに基づく医療の裏付けとして欠くことの出来ないものである。

(4) 診療情報の提供、保存や医療機関相互の連携の強化

非加熱製剤によるエイズの感染の問題以来、診療録の保存期間を延ばす方向で世の中は動いている。具体的には、現在5年間である保存期間を民事上の損害賠償の請求時効に準じて20年にすることが検討されている。これをもとに考えると、その保存書類の総量は現在の4倍となり、量もさることながら20年もの長期の期間その情報を劣化させずに保存して於くためには、やはり電磁化は避けて通れない。

 ここで話は寄り道にそれるが、診療録の保存期間の延長について考えてみたい。
 カルテ(診療録)に書かれている内容は主として「学術的内容」と「健康保険情報」に分けられる。そして現在では主として「健康保険情報」に重きをおいた記載法が取られていると言っても過言ではない。例えば、アルギン酸と寒天の連合印象を「C-imp(H+A)」と書くこと等が代表例であろうか。
つまり診療録のこれらの記載の正当性を裏付けるものは行政による、「疑義解釈」や「通知」によらざるを得ない。しかし、これらの行政の情報の保存期間はものによって7年と定められている。とすると、診療録の記載内容に問題が生じた20年後には、それらの記載の裏付けとなる行政文書が廃棄されてしまい、記載の正当性が証明できないようなことが生じかねない。つまり、診療録の保存期間の延長と同時にそれらの裏付けとなる行政情報の保存期間の延長なども考慮しなければならないと言うことである。

 次に、診療情報を電磁保存することによって生じ得る問題について考えてみたい。
その代表的な問題は、プライバシーの保護や情報の改竄の防止をどうするかと言うことである。

(1) その情報の正当な利用に於いて便利であるということは、逆に言うと不正利用に於いても便利であるとも言えるのである。それに対しては、パスワードなどの認証方法を確立することも重要であるが、それらの運用において厳選をきたすこともさらに重要である。

(2) 円滑で有用な情報の共有化を推進する場合には、使用する用語やコード番号を標準化しなければならず、その代表的なものがMMLである。

(3) 医療情報は紙に保存しなければ成らないと言う面の解決の必要性。

これらの原則をもとに「診療情報の電磁保存」を行わなければならない。

 

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