医療水準

 

最終更新日 2017/09/13

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 医療水準に関連した判例の代表的なものとして、 最高裁判決昭和57年3月30日の「高山日赤未熟児網膜症判決」がある。
このなかにおいて、「診療当時の臨床医学の医療水準」を基準として採用する旨を示し、これを逸脱した場合に医師側の責任を問っている。

 次に、医療水準を全国一律のものと考えるか否かにつき、上記判決における見解として、医療水準は全国一律ではなく「当該医師の置かれた諸条件、例えば、当該医師の専門分野、当該医師の診療活動の場が大学病院等の研究・診療機関であるのか、それとも総合病院、専門病院、一般診療機関などのうちのいずれであるのかという診療機関の性質、当該診療機関の存在する地域における医療に関する地域的特性等を考慮して判断されるべきものである」としている

歯科医療における代表的な医療水準判断事例

●  昭和50年3月、患者が開業歯科医師に下顎部歯茎内側に発生した直径約1.5センチメートル大の半球様のこぶ状の物の診察を受けたところ、レントゲン検査の必要はなく軟骨であるから心配いらない旨の診断を受けたので放置していたが、約1年後に改めて大学病院に受診した結果、レントゲン検査等を経てエナメル上皮腫と診断され手術を受けたので、開業歯科医師に対し、レントゲン検査をせずに誤診をしたとして訴えおこした例。

 判例として、「本件において、大病院の医師としての高度の注意義務を被告に要求することは・・・妥当ではない」とし、エナメル上皮腫については一般開業歯科医師の設備及び技術ではレントゲンによる撮影及び病名診断は困難であること等を理由に「一般開業の歯科医としての医療水準からみて、被告が原告を診断した時点において、原告の右こぶ状の物について的確な診断を下すことはその症状からなお困難があったものとみるを相当とし、被告がレントゲン撮影その他の検査を行わず、また、他の十分な設備の整った病院の診断を受けるよう原告に勧めなかったからといって、右段階において、直ちに被告に一般開業の歯科医師として通常用うべき注意義務を怠った過失があるものとして、その責任を問えない」と判決して請求を棄却しています。

# 結論: エナメル上皮種は一般開業医での診断は困難であるというのが当時の医療水準である。

● 患者が開業歯科医師に従来のブリッジを除去して新たなブリッジの製作・装着を受けた後、治療部位に下顎運動障害、咬合不全、舌部等への多数の咬傷が生じ、口腔内の出血、粘膜剥離、慢性的炎症等の症状が発生したので、患者が、歯科医師には、
(1)架工義歯製作・装着上の過失があり。
(2)右装着後に改善措置を講じなかった過失も存在する。
と主張したというものである。

 判例として、(1)については、歯科医師は、ブリッジの形状が患者に適合しないときは、咬合不全による咀嚼系機能障害、舌部及び内頬部における咬傷、ひいてはこれらに起因する慢性的炎症等の傷害を惹起することを予見し、これを防止すべき注意義務を負うが、ブリッジの咬合状態等に及ぼす影響は個性的且つ微妙で装着後の使用による順応性により適当な口腔状態の形成・保持も期待できるので、「開業歯科医師としては、患者の従前の歯牙・義歯の形状及び咬合状態に格別異常を認めない限り、その形状と状態を参考として、開業歯科医師の有する通常の設備、歯科医学的技量をもって通常の方法に従って架工義歯を製作・装着すれば、一応前記注意義務を尽したものというべきである」として、右(1)の過失を否定した。

 (2)については、患者が前記「症状等についてその発生の都度被告に対し訴えたことが明らかである」とした上、前記運動障害につき「開業歯科医師としては通常の診療及び平常使用の咬合器によって容易に発見しうるものであり、本件治療行為当時における一般開業歯科医師の水準によっても、咬合不全、下顎運動障害が、咀嚼系統に異常をもたらす原因となることは周知の事実であった」にもかかわらず、原告の前記主訴等につき、精査、原因の検証、探求等をおこなわなかったとして、この点に関する過失を認めている。

# 結論: 開業医の通常の技量によってブリッジを作製すれば注意義務は果たしたと考えられる。
# 結論: 顎関節症の訴えに対して適切な原因追及の手段をとらなかった点においては過失を認めた。

● 4歳児である患者が抜歯治療中に急に顔を振ったため、歯科医師が既に抜歯して鉗子に挟んでいた乳歯を患者の口腔内に落下させ、歯科医師が口中から吐き出させようとして患者の上半身を起こしたところ、患者が乳歯を声門下部に詰まらせて気道閉塞し、間もなく窒息死したという例。

 本判例は、乳歯を口腔内に落下させた時点では右患者は気道閉塞の症状には至っていなかったのであるから、右患者を水平位のまま「上半身を起こすことなく異物を取り去る措置をとるべきであった」が、歯科医師は、「かえってその挙に出てはならないとされているところの右患者を水平位から座位に起こす措置を採ったのであり、これは医療水準から見て注意義務に違反している」等として、医療水準論に言及した上、歯科医師の過失は重いと判断した。

# 結論: 口腔内に異物が落下した場合、体位を起こさず水平位で対処するのが適切な対処法と思われる。

● しかし、一般の歯科医師が認知していなかったと言うことを医療水準としてとらえない以下の判例も存在するので注意が必要である。

 福岡地判平成6年12月26日は、アスピリン喘息患者に対するロキソニンの投与は禁忌であることを知らなかった歯科医師が投与した鎮痛抗炎症剤ロキソニンによってアスピリン喘息患者がアスピリン喘息発作を起こして窒息死した例である。

 本判例において「アスピリン喘息に関する知識が福岡市内の開業歯科医師の間では一般的に定着するに至っていたとはいえないなどの事情は被告に課せられていた研鑽義務を何ら軽減するものではない」としていることは重要である。

# 結論: つまり知らなかったという理由は許されないということ。

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