転医勧告義務違反損害賠償訴訟
Top 最終更新日 2019/07/19

■ 転医勧告義務違反損害賠償訴訟

# 平成17年2月15日 仙台地裁判決

# 裁判の概要: 平成9年12月14日に上顎癌のため死亡した亡Aの夫である原告が、亡Aが生前通院していた被告医院の医師である被告に対し、亡Aが死亡したのは、被告の診療上の過失(亡Aの症状によれば、同人に上顎癌などの他の重大な病気の可能性の疑いがあることを十分に説明した上で、より高度な医療を施すことができる医療機関への転医を勧めるべきであったにもかかわらず、これを怠った。)により上顎癌の発見が遅れ、効果的な治療を受ける機会を失ったことが原因であるとして、診療契約上の債務不履行又は不法行為に基づき損害賠償を求めた例。

# 判決の概要
・ 医療機関側は患者側に550万円と利子を支払うこと。
・ 原告のその他の請求は棄却。
・ 訴訟費用の1/7は被告負担、残りは原告負担。

# 原告側の請求
・ 約4020万円の損害賠償請求。

# 主な争点
・ 被告の転医勧告義務違反の有無と損害(死亡)との因果関係。
・ 損害額。

# 原告の主張
・ 被告の診察時には、亡Aの病気が、それまでの慢性副鼻腔炎の症状と異なる経過を辿っていたのであるから、被告は、耳鼻咽喉科の専門医として上顎癌等の他の重大な病気の可能性を疑うべきであり、その時点において、亡Aに十分な説明をした上で、被告と連携関係にありかつ高度の医療を施すことのできるB病院へ転医させる処置をとるべきであったが、漫然と従前の慢性副鼻腔炎に一時的な風邪症状を合併したものと誤診し、説明と転医勧告を怠った。
・ 早期に転医させていれば、早期にしかるべき治療が行われたはず。

# 経過
・  亡Aは、同年7月初旬ころ、右下の歯肉痛が発生したため、同月8日、多賀城市内のE歯科医院を訪ね、歯科医師F医師の診察を受けた。
  その際、F医師は、亡Aの口腔内のパノラマ及びデンタルレントゲン撮影を行った。その結果は、右下5番と7番の歯槽骨及び歯根膜には異常がみられず、5番には2次カリエスが認められ、8番の近心歯槽骨にもやや吸収が認められた。
  F医師は、一般検査により歯牙の動揺度とEPPの測定を行ったが、特に顕著な結果は認められなかった。
  以上の検査結果から、F医師は、右下567Brの咬合性外傷を疑い、歯冠形態修正を行った。

・・・・歯科医院でいろいろ治療したみたいですねぇ。

# 裁判所の判断
 被告のような開業医の役割は、風邪、鼻炎などの比較的軽度の病気の治療に当たるとともに、患者に重大な病気の可能性がある場合には、高度な医療を施すことのできる診療機関に転医させることにあるのであって、開業医は、通院を継続している患者につき、上記診療機関に転医させるべき疑いのある徴候を見落としてはならず、このような徴候を認めた場合には、患者が必要な検査、治療を速やかに受けることができるように相応の配慮をすべき義務があるというべきである。
・ 亡Aが被告の過失により、その死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性を侵害されたことによって大きな精神的苦痛を被ったことは、容易に推認し得るところ、被告の過失内容、亡Aの死因となった疾病と症状経過及びその生存率その他本件口頭弁論に顕れた諸般の事情を総合考慮すると、この苦痛に対しては500万円をもって慰謝するのが相当と認める。
・ 被告が転医勧告義務を怠ったことと亡Aの死亡との因果関係を認定し難いことは前示のとおりであるから、原告が主張する逸失利益、死亡慰謝料、原告固有の慰謝料を認めることはできない。
・ 以上の次第であるから、原告の請求は、被告に対し、不法行為による損害賠償として4(1)及び(3)の合計550万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成9年12月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので認容し、その余を棄却することとし、仮執行免脱宣言の申立てについては相当でないので却下することとして、主文のとおり判決する。 

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