不正利得返還等請求
Top 最終更新日 2019/07/31

■ 不正利得返還等請求事件

# 岡山地裁判決 平成18年1月31日

 玉野市の住民の原告が、被告の医療法人の経営する病院が特別養護老人ホームの入所者らに係る歯科医療給付を不正に受給したとして、被告の医療法人に対し玉野市に代位して同給付の返還を求めるとともに、玉野市長に対しても被告医療法人に対する不正利得返還請求権の行使を怠っているとして同不行使が違法であることの確認を求めた事案において、被告医療法人の不正受給を認めて全額の返還を命じたほか、被告の玉野市長が支払請求を怠ることが違法であることの確認を認容した事例。

# 主文

1 被告甲会は、玉野市に対し、金573万7530円及びこれに対する平成14年4月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告玉野市長が被告甲会に対し前項の金員の支払請求を怠ることが違法であることを確認する。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 この判決は1項に限り仮に執行することができる。

# 事実及び理

第一 当事者の求めた裁判

一 請求の趣旨
 主文同旨

二 請求の趣旨に対する被告らの答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

# 本件入所者らについての診療報酬
 (一) 被告甲会は、平成11年1月から平成13年1月までの間、玉野市に対し、本件入所者らに対して歯科診療をしたことを内容とする支払請求書等を提出し、玉野市から老人保健法上の医療に関する費用として別紙1のとおり合計494万4600円の支払いを受けた。
(二) 他方で、被告甲会は、本件入所者らに対して、上記の歯科診療に係る本人負担分の請求をしていなかった。

# 被告甲会に対する指導・処分等の経過
(一) 岡山県国民健康保険団体連合会は、平成13年1月18日、被告甲会に対し、社会保険医療担当者の個別指導を実施し、同年2月20日、診療内容及び報酬請求に関して適正を欠く事項を指摘して改善を促し、診療報酬算定の不適切な件について自主返還を要求し、「再指導」を行う旨通知した。これに対し、被告甲会は、すべての改善指示事項について改善が行われた旨の報告書を提出し、同年3月23日、同連合会に返還同意書を提出した。
(二) G園の園長は、同年8月30日、玉野市社会福祉事務所に対し、同園入所者につき、歯科診療を受けていないのに玉野市から医療費に関する文書が送付されている者が多数いると申し入れ、その後、不正請求の疑いのある対象者として本件入所者らを含む38名が記載された名簿を提出した。玉野市社会福祉事務所は、同年9月18日までに、上記名簿と診療報酬明細書の写しを岡山県の担当課に提出した。
  岡山県の担当課は、玉野市社会福祉事務所に対し、患者の調査を行い、確証を得た後、被告甲会の調査に入るまで6か月程度の期間を要する旨説明した。
(三) 岡山県国民健康保険団体連合会は、平成14年2月15日、被告甲会に対し、2回目の個別指導を実施したが、改善が見られず、さらに新たな不正請求がなされた疑いが強いと判断し、同年3月18日、丙クリニックへの監査を実施した。
(四) 岡山県国民健康保険団体連合会は、平成14年5月22日、被告甲会に対し、本件入所者らを含む者について313万6740円の返還を求め、被告甲会は同年5月27日、これを返還した(うち本件入所者に関する返還金は、次のとおり、総計118万4910円である。)。
(五) 岡山社会保険事務局は、平成14年7月25日、8月29日、9月26日、10月28日及び11月28日の合計5回にわたって、被告甲会に対する聴聞を実施した。(甲20、36)
(六)(1) 岡山社会保険事務局は、平成15年3月20日、次の処分(以下「本件各行政処分」という)をした。
ア 同年3月24日をもって、丙クリニックに対する保険医療機関の指定を取り消す。
イ 同年3月24日をもって、Bに対する保険医の登録を取り消す。
ウ 同年3月24日をもって、Cに対する保険医の登録を取り消す。
(2) 上記(1)ア及びウの処分の理由には、丙クリニック及びCが、(神12年9月ないし平成13年1月、Tに対して歯科訪問診療をしていないのに、歯科訪問診療をしたとして、∧神12年7月、8月、11月、12月及び平成13年1月、Kに対して歯科訪問診療をしていないのに、歯科訪問診療をしたとして、J神12年11月、Kが他の保険医療機関に入院中であるにもかかわらず、G園において歯科訪問診療をしたとして、な神12年10月3日、Hが日帰りバス旅行中であったにもかかわらず、同時刻に歯科訪問診療をしたとして、それぞれ歯科訪問診療料等を不正に請求していたことも含まれていた。
(七) 被告甲会は、平成15年3月31日、本件各行政処分取消訴訟を提起した。

# 監査請求及びその結果
(一) 原告は、平成14年2月4日、玉野市監査委員に対し、「被告甲会は、平成11年1月から平成13年1月までの間、本件入所者らに対して、実際には歯科医療行為をしていないのに、これをしたように装って、虚偽の記載をした支払請求書等を玉野市に提出して、玉野市に国民健康保険の療養給付に関する費用の支払いをさせた。玉野市は、被告甲会に対してこの不正利得返還請求権とこれに100分の40を乗じた付加金の支払請求権を有しているが、その行使を怠っている。よって、玉野市が被った損害を填補するため必要な措置をすることを求める。」旨の監査請求をした。
(二) 玉野市監査委員は、平成14年3月25日、「内容が本市の長、職員等の行為または事実に対するものではないこと、また財務会計上の問題ではないこと」を理由に、前記(一)の監査請求を却下する決定をし、同日ころ、当該決定の通知書が原告に到達した。
(三) 原告は、平成14年4月22日、本件訴訟を提起した。

# 本件請求
  玉野市の住民である原告は、「被告甲会が老人保健法の医療に関する費用494万4600円を不正に受給しており、玉野市は老人保健法42条3項により、被告甲会に対し同額の不正利得返還請求権及びその金額に100分の40を乗じた額である197万7840円の加算金支払請求権があるが、118万4910円は既に弁済されたから、残額573万7530円の支払請求権を有しているにもかかわらず、その権利行使を怠っている。」と主張して、(神14年法律第4号による改正前の地方自治法(以下、単に「地方自治法」という)242条の2第1項4号に基づき、被告甲会に対し、金573万7530円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成14年4月28日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を玉野 市に支払うよう代位請求し、同条1項3号に基づき、被告玉野市長に対し、被告甲会に対する上記,龍皸の支払請求を怠ることの違法確認を求めた。

# 争点
1 被告甲会が、平成11年1月から平成13年1月までの間、本件入所者らに対してなした歯科診療行為の有無、程度
2 被告甲会が本件の医療費不正受給に伴い玉野市に支払うべき金額
3 本件につき、被告玉野市長に違法に怠る事実があるか
4 本件代位請求に係る訴えの可否

# 結論
 してみれば、玉野市は老人保健法42条3項に基づき、被告甲会に対し573万7530円の支払請求権があるところ、その権利行使を怠っているものというほかないから、|亙自治法242条の2第1項4号に基づき、被告甲会に対し、金573万7530円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成14年4月28日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を玉野市に支払うよう代位請求し、同条1項3号に基づき、被告玉野市長に対し、被告甲会に対する上記,龍皸の支払請求を怠ることの違法確認を求める原告の請求はいずれも理由がある。

統計表示Copyright (C)1997- DscyOffice